映画「マネー・ショート 華麗なる大逆転」を見てきました。

【まだ観てない方ご注意、これを読むと”ネタばれ”有りです】

ユーザーレビューの点数は3.28と低かったのですが、これは致し方ないかもです。 内容が分かり難い金融用語が飛び交い、ストーリーも何人かの人物をオムニバス調で追いかけてるからでしょうね。 しかし、私にとってはとても面白かった、というか、大変勉強になりましたよ。

そこのところを書いてみたいと思います。

記事の最後に、映画で使われた日本食レストラン、日本語で流れた歌、映画ポスターの有り得ない間違いなど、マニアックなところも書いていますので読んでくださいね。

 

映画 マネー・ショート から学ぶ

 

とりあえず、出演者が誰だったのか、一応押さえておきます。

|主なキャスター

☑ クリスチャン・ベイル 42歳 イギリス出身

バットマン ビギンズ 2010年には「ザ・ファイター」で見事アカデミー賞助演男優賞に輝いた俳優さんです。彼の飄々と遠くを見る、ストイックで独善的なファンドマネージャー役は嵌まってましたよ。

☑ スティーヴ・カレル 53歳 アメリカ出身

役処では、毒舌を吐く銀行系のファンドチームボス。おかしなことにはおかしいと誰にでも突っ込む性格、コメディー俳優で活躍しているとは思えない彼も嵌まり役でした。

☑ ライアン・ゴズリング 35歳 カナダ出身

バンク社員でありながら彼の立ち位置がいまいち理解できなかったのですが、とにかくサブプライムローンの異常さに気付き、ファンドへしかけるペテン師的な扱い。しかし、ペテンではなく現実となり報酬を得た男。

☑ ブラッド・ピット 52歳 アメリカ出身

この役はブラピでなくて誰でもできたと思えます。 役処は、銀行を知り尽くしたカリスマトレーダーという役。

☑ 監督は、アダム・マッケイ、アメリカ出身の47歳、今回の作品でアカデミー賞脚色賞を獲っています。

 

さて、簡単なあらすじに入ってみます。

あらすじ

まだ、上映中なのでネタバレということなんでしょうが、実話を元にしてますので関係ないですね。

Yahoo映画から引用するとこうなる。

リーマンショック以前に経済破綻の可能性に気付いた金融マンたちの実話を、クリスチャン・ベイルやブラッド・ピットといった豪華キャストで描く社会派ドラマ。サブプライムローンのリスクを察知した個性的な金融トレーダーらが、ウォール街を出し抜こうと図るさまを映し出す。クリスチャンとブラッドに加え、スティーヴ・カレル、ライアン・ゴズリングも出演。『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』などのアダム・マッケイがメガホンを取る。痛快なストーリーと、ハリウッドを代表する4人の男優の競演が見どころ。

 共にアカデミー賞候補になった「スポットライト 世紀のスクープ」と同様、この映画は結末が知れ渡っている物事の「過程」をドラマにしている。アメリカの住宅ローン市場が崩壊し、2008年、リーマン・ショックに端を発する金融危機が勃発する。そんな結末がわかった上で、それまでに何があったのかを、危機を予測した投資家やトレーダーの視点から描いている。金融危機という爆弾が炸裂するまでに導火線がじりじり燃えていく様子を、スリリングなドラマに仕立てた点が秀逸だ。

 投資家のマイケル・バーリ(クリスチャン・ベール)が住宅ローン市場の危険性を察知したのは、リーマン・ショックの3年前。彼や彼の動きに追随したトレーダーたちは、金融バブルを謳歌する証券マンの嘲笑を浴びながら、逆張りの投資に打って出る。そんなトレーダーたちの調査のエピソードを通じて、マイケル・ムーアが「キャピタリズム マネーは踊る」の中で「狂ったカジノ」と呼んだ金融界のハチャメチャぶりが浮かび上がってくるところが面白い。犬の名義で住宅ローンが組まれていたり、不良債権の合成麻薬のような商品が作り出されたり。何でもありのモラルの低さは笑いを誘う一方、今もこのカジノを中心に世界経済が回っているのかと思うと背筋が寒くなる。

 映画のもうひとつの面白さのツボは、バーリたちの予想が的中したことを喜ぶ単純な痛快話に終わっていないことだ。アメリカ経済の「負け」に賭けることで勝利するバーリたち。しかしブラッド・ピット扮するカリスマ・トレーダーが言うように、彼らの勝利は無数の庶民が失業や破産に追い込まれることを意味する。加えて、自国が戦争に負けて傷つかない国民がいないのと同じように、バーリたちも様々な形で傷を負う。勝っても負けても人の心を蝕み、周囲に多くの犠牲者を生むマネーゲーム。その空虚な本質に迫っている点が、リーマン・ショックの再来のような金融危機が起こりつつある今、特にタイムリーに感じられる映画だ。

そもそもサブプライムローンとは何?

サブプライムローンとは、アメリカで貸し付けられたローンのうち、サブプライム層(プライム層(優良客)よりも下位の層)向けとして設定されたローン商品をいいます。 通常の住宅ローンの審査には通らないような信用情報の低い人向けのローンなんです

住宅を担保とする住宅ローンが対象なのですが、広い意味では、自動車担保など住宅以外を担保とするものを含んでいるようです。 一般的に通常のローンと比べて債務履行の信頼度が低く、利率も高く設定されています。 つまり焦げ付きやすい債券なんですね。

 

証券化が招いた隠れ蓑

これらのローン債権を証券化するんです。 世界各国の投資家へ販売されましたが、アメリカにおいて2001 年から2006年ごろまで続いた住宅価格の上昇を背景に、格付け企業(ムーディーズ、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、フィッチの3大格付会社)がこれらの証券に高い評価を与えていました。

サブプライムローン問題が発覚し、リーマンショックが起こると、格付け会社がお墨付きを与えていた「AAA(トリプルエー)」の債券などに低い格付けの債券も含まれていたことが分かり、どんな調査をして格付けしていたのか問われることになります。

 

格付けとは

この行為は、まるで、街の有志のぼんくら息子に、親と関係のある学校が高評価の内申書を出すようなものです。 これを信じて入学させた学校は、知らずに不良が増産し、ひいては学校の荒廃につながった、そういうことなんですね。 これを、誰も気づかず何年も当たり前のように続けられていたんですから。 恐ろしいです。

映画の中でも描かれていますが、「これは何かおかしいぞ?」とクリスチャン・ベイルが演じるファンドマネージャーが破綻の2年前に住宅ローンの滞納率を調べるんです。 そこから物語は始まります。

格付け会社S&Pなら、「AAA」から「D」までの22通りの格付け。

①AAA  ②AA+ ③AA  ④AA- ⑤A+ ⑥A  ⑦A-

⑧BBB+ ⑨BBB ⑩BBB- ⑪BB+ ⑫BB  ⑬BB- ⑭B+ ⑮B ⑯B-

⑰CCC+ ⑱CCC  ⑲CCC- ⑳ CC  ㉑C  ㉒ D

ちなみに、日本の長期国債の格付けは、5番目の「A+」です。

ドイツは「①AAA」、アメリカは「②AA+」

中国は「④AA-」、どう思います? 本当でしょうか。 残りのBRICs国は、 インドは「⑩BBB-」、ロシアは「⑪BB+」、ブラジルは「⑫BB」。

昨年危機といわれたギリシャは「⑯B-」。

アルゼンチンは最悪の「㉒ SD」、一部デフォルト状態だとか。

 

実態とかけ離れた格付け

問題は、銀行が担保を集めて証券化するのですが、格付け会社が「AAA」と評価している商品に、それ以下の「A-」や「BB+」などの債券を潜り込ませていたのです。銀行はお客さんですからお客の持ち物を「B」ですねとは言えません。 つまり、絵空事での格付けなんです。 他が下がっても証券化された「AAA」商品の格付けは見直されません。 どう考えてもおかしい、ということに抗議しますが、みんな相手にしません。

どうしてかって? 全員が安全と思っている債券が下落するなんて有り得ないと思ってるんですね。 不良債権なんてないと。

しかし、2007年夏ごろから住宅価格が下落し始めるんです。 返済延滞率が上昇し、住宅バブル崩壊へと至ります(サブプライム住宅ローン危機)。

ローンを払えそうもない移住者や、収入が安定しない人へどんどん貸し付けているのですからね。 ローンを組んで家を買い、その家を担保にまた家を買い、これを繰り返して1の評価が20倍の価値へ膨らんでいく。 これをバブルといわずしてなんといいましょう。

これが、サブプライムローン問題の本質だったのです。

 

|リーマンショックへと続く

これと共にサブプライムローンに関わる債権が組み込まれた金融商品の信用保証までも信用を失って、市場では投げ売りが相次ぎました。

この波紋からとうとう2008年9月15日には、リーマン・ブラザーズ倒産に追い込まれ「リーマン・ショック」ということになるんです。 高い信用力を持っていたAIG、ファニーメイやフレディマックが国有化される事態にまで至りました。 その後も幾度もの大幅な世界同時株安が起こっていきます。 この事から世界中の金融機関で信用収縮の連鎖がおこり、世界金融危機となっていくのです。

日経平均株価の推移(月足)を見てみましょう!

|そもそもサブプライムローンが起こった温床は?

2000年にITバブルがはじけ、インターネット・情報技術関連企業の上場が多い米国NASDAQ市場は大暴落しました。 その影響から2001年4–6月期から、アメリカのGDPが3四半期連続のマイナス成長となり、失業率も増加の一途をたどり、米財政赤字は拡大を続け、米国経済は停滞します。 米国政府は経済対策として大規模所得減税を実施し、FRBは2000年末から利下げをくり返していました。

そのような状況の中、2001年9月11日にはあの忘れ得ない「ワールドトレードセンター同時多発テロ事件」が起こります。 2001年FRBの政策金利は、誘導目標を年初の6.5%から12月の1.75%まで引き下げを行い、米国金融史上で最も低い低金利政策となります。最終的には2004年5月まで1%という低金利政策が続きました。

最初は正当視されていたましたが、その後、不動産、住宅、債券などの資産バブルが明らかになると、行き過ぎた低金利政策が資産バブルの温床となったとして批判の的となります。

しかし、途上国の経済発展を背景に、エネルギー需要、食料需要などの資源需要は高まり、原油価格の上昇も加速されました。 産油国は莫大な利益を上げ、その利益はヨーロッパやアメリカのヘッジファンドの金融部門へと流れ、世界的な金余り現象が発生するのですね。 お金がじゃぶじゃぶです。

このお金の行き先で考え編み出された一つがサブプライムローンです。 世界的な資金がアメリカ合衆国に集中するようになりました。 これが米ドル高となり、米国国内に流入した過剰流動資金が米国不動産市場にも流れてサブプライムローンに代表される住宅バブルを構築する土壌になったのです。

住宅ローンの個別債権は証券化(不動産担保証券:MBS)され、高利回りの金融商品として世界各国に販売さました。 MBSの販売には格付け機関が信用力の調査情報を提供し、貸し倒れに対する保証としてはクレジットデリバティブ(債務担保証券:CDOやクレジット・デフォルト・スワップ:CDS)などの金融商品が利用されました。

映画にも出てきますが、MBSやCDOとかCDSという3文字単語ですね。 この仕組みになると金融工学の世界ですのでうまく説明できませんが、簡単にいうと「予約の取引」です。 今回のヒーローたちは、サブプライムは破綻すると見越しましたので、破綻することを前提に保険を掛けるんです。

例えば、高額の保証料を払い続けても100円のものが80円以下になったら20円の保証をして欲しいと契約します。 契約先は80円以下になることはないと思っていますので契約保険料の毎月1円が収入として入ってくると大喜びです。 契約者であるヒーローは、毎月預かった資産から毎月1%を支払います。これが2年続いたら24%も預かり資産が減ることになります。

果たしてそれまで資産を持ちこたえられるのか。 資産を預けている投資家が離れて行けば壊滅状態となります。 ファンドマネージャー役のクリスチャン・ベイルは、ドラムを叩きながら誰の忠告も無視して耐えるづけるのですね。 この世界の人の強靭な精神力は脱帽です。 一般人なら、みんなが止めた方がいいよ、といえば数カ月で尻尾を巻いて逃げ出したことでしょう。

しかし、彼らは違いました。 やり遂げます。 思惑通りになったのです。

一方で、スティーヴ・カレル扮するマネージャーは悩みます。 自分たちの予測は間違っていなかった。 しかし、決して喜べない。 なぜなら、経済は破綻し、多くの企業が倒産し、多くの失業者がでる。 明日の生活にも困る人がでてくる。 学校へも行けない子供たちがでてくる。 と涙ぐむのですね。 本質をついた良心です。

 

おまけ情報

☑ 映画の中に使われたニューヨークの寿司レストラン「NOBU

日本人らしき金の亡者と化したる日本人金融マンへ、ファンドのスティーヴ・カレルが儲けの手口を聞き出すために追及する場面。

「NOBU」は、ノブ・マツヒサ(松久信幸)がニューヨークで開店し成功したお店。 彼は母国日本で寿司づくりを学び、若き職人時代をペルーとアルゼンチンで過ごし腕を磨きました。 寿司店を数度開業し不運な結果に終わりますが、マツヒサの常連客だった俳優のロバート・デ・ニーロが寿司店の共同経営を熱心に誘ったことで1994年のノブ開店に至ったといいます。 いまでは17カ国で30数店舗を擁するホスピタリティ・グループへと躍進しています。

☑ そこで流れる日本語の歌 徳永英明の「最後の言い訳」 だった!

この歌を使ったというのは、けっこう仕込まれているな、と思いました。 そもそも、歌詞に「いちばん大事なものが いちばん遠くへ行くよ~ いちばん近くにいても いちばん判り合えない」というさびが流れます。 まるで魔法のように大金が消えて無くなってしまったウォール街への皮肉と哀悼そのものですね。

☑ 映画ポスターの構成ミスプリントか!

下のポスターを見てください。

キャストの名前が写真と入れ替わっていますよ~!

スティーブ・カレル、クリスチャン・ベールでしょ。

ここだけがちょっと残念。 配給元いい仕事してくださいね。

 

私にとっては、なかなか考えさせられる良い映画でした。

 

~ まとめ ~

☑ これを観たおかげで、「ITバブル崩壊」「サブプライムローン問題」「リーマンショック」「世界経済破綻」というキーワードの点と点が映像として繋がりました!

☑ 更にそれを察し、おかしな目で見られながらも敢然と儲けたアウトロー達がいたというお話。 「金欲」という世界は、今後も何度となく同じことを繰り返すのだろうと、恐ろしい想いをいだくのは私だけでしょうか。 人はいろいろなことを編み出します。 特に今のようなネット社会になりますと、情報伝達も一瞬、反応も一瞬。 すべてが同時並行的に動いていきます。

☑ 現在、日本では日銀によるマイナス金利を導入しています。 中国をはじめとする新興国経済の減速、アメリカだけが経済的には安定しているといいながらここにきて失速ぎみです。 FRBの利上げに関心は集まっていますが、このところの株価の乱高下はどうなんでしょう。 為替も円安から円高に振れたかと思いきやいまだ不安定な状況です。 唯一原油価格の下落はストップしたかのよう思えますが、産油国の横にらみをみてますと、これもどう振れるやら。

どちらにせよ、今回の映画からも学んだことは、

☑ 「正しいものは正しい。 おかしいと思ったことはおかしいと指摘する」

☑ 「間違った方向や一方的な方向へいつまでも進むことはない」

ということです。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。