つぶつぶ製品の落とし穴? マイクロビーズが起こす海への環境ダメージ!
「スクラブ製品」(つぶつぶ製品)の脅威についての記事を久しぶりに目にしました。
私たちが普段何気なく使っているスクラブ洗顔料や歯磨き粉、クリームなどの一部に、「マイクロビーズ(マイクロプラスチック)」と呼ばれるプラスチックの粒子がその材料として使われいるのです。 いわゆる、「つぶつぶ〇〇入り」みたいなうたい文句でネーミングされた製品ですね。
スクラブ(つぶつぶ)素材すべてが良くないというのではありません。 あくまでも、自然素材から作られたものではなく、化学的に作られた極小サイズのプラスチック粒子などを指します。
化粧品などにも利用されるので、「マイクロプラスチック」といかにもプラスチックが入っているのですかという印象を与えるネーミングよりも、拒否反応を避けるためにも「マイクロビーズ」と呼んだほうがベターだったんでしょう。
それでは、「マイクロビーズ」の何が今さら大きな問題になっているかというと、
|マイクロビーズ、環境への危険性
特に海洋環境における汚染循環の指摘です。 人が洗顔などで利用して海に流れ出したマイクロビーズ、マイクロビーズは特性として、殺虫剤のような毒素や重金属など有害物質や汚染物質を吸着する性質を持っています。 魚が有害物質を吸着したマイクロビーズを食べるため、いずれは人間が汚染された魚を食することになります。 この食物連鎖の過程で、マイクロビーズが媒介役となっているんです。
|禁止に動き出したアメリカ
2015年12月28日、年の瀬に、バラク・オバマ米大統領が、「マイクロビーズ除去海域法」という法案に署名し、法律が成立したのです。これによって米国では2017年7月から、スクラブ洗顔やせっけん、歯磨き粉に入っているツブツブ(マイクロビーズ)が製造禁止になり、その1年後の2018年6月には販売が全面禁止になります。 じゃ、それまでこの話題は放置されていたのか、ということですが、実はかなり前から指摘されていたのですね。ただし、食物連鎖の正確な確証は得られていませんので、あくまでも可能性と脅威として認識されていました。
|日本でのメディアニュースでは?
直近では、2015年10月29日放送のNHKのクローズアップ現代で取り上げられていました。
一見、ゴミも浮いていない海。しかし、その中にある微細な物質が大量に漂っている。大きさ5㎜以下のプラスチック=”マイクロプラスチック”だ。世界中から海に流れ出るプラスチックの量は、推計最大1300万トン。それが砕け目に見えないほど小さくなり、海に漂っているのだ。”マイクロプラスチック”は、海水中の油に溶けやすい有害物質を吸着させる特徴を持っていて、100万倍に濃縮させるという研究結果も出ていて、生態系への影響が懸念され始めている。今年のG7でも、マイクロプラスチックの問題が、世界的課題だと指摘され、日本の環境省も大規模調査を開始している。世界の海で何がおきているのか。マイクロプラスチック汚染の実態と、始まった対策を追う。
これよりも1年前の2014年5月22日のニュース配信でもその年2月にアメリカで法案が提出され、日本でも市場の状況を調べるなど調査に乗り出したようですが、企業の自主規制以外に働きかける以外は大きな動きにはなっていないようです。
食物連鎖に入り込む「スクラブ洗顔剤」の一部、米国で規制へ 洗顔剤などに使われている微細なプラスティック粒子「マイクロビーズ」は、下水処理を通り抜けて食物連鎖に入り込む。州法で規制する動きが米国各地で出てきている。(中略) マイクロビーズは細かくて水にも浮くので、その多くが排水処理プラントをすり抜ける。下水処理施設で水を濾過する網の目は、マイクロビーズより大きいことが多いのだ。 下水処理施設を通過したマイクロビーズは、「毒性のある化学汚染物質を吸収するスポンジ」となる。そしてそれを、水生生物は食べ物だと間違えてしまうのだ。こうして、汚染物質が食物連鎖に入り込み、人間が食べるものも含めて、魚や鳥、カメ、哺乳類などが汚染される可能性がある。 オランダの環境研究所(IVM)が行った2012年の調査(PDF)では、200ml容器のスクラブ製品ひとつにつき、最終的に21gのマイクロプラスティックが下水に流れこむことが確認された。ニューヨーク州だけで、毎年19トン近いマイクロビーズが下水に流されているとする研究(PDF)もある。 目が細かいトロール網を使って米国の五大湖で行われた2012年の調査では、マイクロプラスティックの小さな粒が多く見つかった。この粒は、ふたつの有名ブランドの洗顔クレンザーで使われているものに一致した。 五大湖では、収集された1mm未満のマイクロプラスティックのうち、58%が球形だった(球形は、コスメティック製品に由来するものである明白な証拠になる)。これに対し、北太平洋では、同じサイズのマイクロプラスティックのうち、球形のものは1%に満たなかった。2013年にはさらなる調査が行われ、多数のマイクロビーズがあることがまた確認された。 マイクロビーズを含むプラスティック片は欧州でも問題になっている。英国の海洋生物学会が2013年に行った調査では、英国南西部のプリマス沖で採取された魚の1/3にプラスティック片が見つかった。調査した504匹のうち36.5%から、摂取されたプラスティック片が見つかったのだ。調査チームによると、こうしたプラスティック片は、食物循環における汚染物質の蓄積につながるおそれがある(太平洋と大西洋には、膨大なプラスティック片が集まった「ゴミベルト」が存在し、問題になっている)。 ニューヨーク州のエリック・シュナイダーマン検事総長は、水域からマイクロビーズをなくすための州法「Microbead-Free Waters Act」の通過を呼びかけている。2014年2月に提出されたこの法律は、同州で販売される製品のマイクロビーズを規制するもので、成立すれば米国で初めてだ(カリフォルニア州でも同様の州法案が提出済みで、ほか数州で準備が進んでいる。日本の製品にも使われているが、規制はない)。 2011年、Procter & Gamble(P&G)、Unilever、Colgate-Palmolive、L’Orealらパーソナルケア製品の有力企業が、自社の製品ラインからマイクロビーズをなくしていくことを約束した。しかし、現在もまだ、マイクロビーズを含む製品は多数、店頭に並んでいる。
その他のまとめ記事では、こんな疑問も呈されていました。
このように、肌の古くなった角質を除去するスクラブ洗顔剤や歯磨き粉等に使われる微細なプラスチック粒子「プラスチック・マイクロビーズ」は環境汚染のリスクが高く、今年2月に米国で規制法案が提出されたのを機に、欧米の化粧品メーカーが相次いで自主規制を発表しました。 厚労省によれば、このマイクロビーズは、目に入ると眼表面を傷付ける恐れもあります。 日本市場での状況を知るためランキング上位130製品を調査したところ(2014年夏頃)、マンダムや花王などを中心に、日本では野放しに使われていることが分かりました。ボディショップなど環境保護をうたうメーカーも平気で使用している一方、「規制の有無に関わらず一切使用しない」と答えるマイナーなメーカーも多くなりました。眼を傷つけるリスクがありながら、資生堂はベビーパウダーやハンドクリームにマイクロビーズ成分を使用していました。
|指摘されている薬用歯磨きの今を検証してみる
ここで薬用歯磨きとして売れ筋、花王の「クリアクリン さわやななナチュラルミントの香味」を検証してみます。
成分表をみると、 湿潤剤:ソルビット液 基剤:水 清掃剤:MC顆粒、炭酸Ca 粘度調整剤:無水ケイ酸、CMC・Na 発泡剤:ラウリル硫酸塩 香味剤:香料(ナチュラルミントタイプ)、サッカリンNa pH調整剤:リン酸1Na、水酸化ナトリウム液 薬用成分:モノフルオロリン酸ナトリウム、ベンゼトニウム塩化物 着色剤:青1 と書かれています。
“ツルツルの歯に”というキャッチコピーでつぶつぶ成分は、ここでいう「清掃剤:MC顆粒、炭酸Ca」ということになります。MC顆粒はマイクロカプセル化された顆粒のことを指しますから、歯の結晶は墨石をすり減らすように減っていきます。それに研磨成分は「粒状炭酸カルシウム」ですね。
「クリアクリーンEXa」では清掃剤に「無水ケイ素」が使われています。他社製品では、「デンターシステマEX(ライオン)」や「ラカルト・ニュー5(エスエス製薬)」などに利用されています。 また、水酸化アルミニウムも研磨成分として利用されています。
マイクロビーズ使用の真偽はわかりませんが、いずれにせよ歯の表面を削る研磨剤としての成分が入っているわけですから、長期の使用はもちろんやめた方がいいです。
歯はいっん削ると元には戻りませんので、特に永久歯に生え変わった子供さんには使ったらダメです。
|安心して使える歯磨きは?
それでは安心して使える歯磨き剤はといいますと、 研磨剤がなるべく入っていない、フッ素の配合濃度が高いジェルを使うのがベターです。
日本ではライオンやサンスターの製品にありました。 「チェックアップ(ライオン)」「チェックアップジェル(ライオン、研磨剤なし)」や「バトラーエフコート(サンスター)」、わかもとの「アバンビーズ」もあります。個人的にはおすすめです。 これなら安心して10年間は使用できますよね。
年をとった私なんかは、白くしたり磨いた気になる研磨剤入りや安心して歯の健康を維持できる製品を求めるよりは、やはり歯槽膿漏対策ですね。これは今回の記事と関係ない余計なお話ですが。
|スクラブ洗顔はどうなの?
マイクロビーズを活用した身近な例として、つぶつぶ歯磨きを取り上げましたが、女性に関心の高い「スクラブ洗顔」についても考えてみました。
スクラブ洗顔とは、ザラザラした細かい粒子が含まれた洗顔料で顔を洗うことです。この粒子を肌の上で滑らせることで、摩擦が生じ、肌を研磨することで、表面にある角質や皮脂を取り除きます。 細かい粒子の正体は、製品によっても異なり、米ぬかや海草、塩、植物の種皮、ナイロンパウダーなど、天然から合成素材までさまざまですが、角質を取り除くという目的は同じです。 含まれる成分によって粒子の大きさや柔らかさにばらつきがあるので、肌質や目的に合わせたスクラブ洗顔料を選ぶことが重要です。
肌を研磨するという意味でも、普通の洗顔料より洗浄力が強く、使用する際はいくつか注意が必要です。
しかし、きちんと肌に合ったスクラブ洗顔料を、正しい使い方さえ守って行えば、美肌にも効果的です。
|5つの効果
①毛穴の汚れを落とす
②ニキビを防ぐ
③ニキビ跡をケアする
④肌の老化を防ぐ
⑤化粧ノリがアップ
|スクラブ洗顔を避けた方が良い人
①敏感肌の人
②乾燥肌の人
成分としては5種類、こんにゃく・米ぬか・砂糖・塩・重曹の入ったスクラブ洗顔料を用途によって使い分けましょう。
スクラブ洗顔は、洗顔では落としきれない汚れを落とし、ターンオーバーを促進することができます。しかし、人よっては、合わないスクラブ洗顔料もありますし、スクラブ洗顔自体を避けた方が良い場合もあります。 お肌のことも大事ですが、環境汚染のことも配慮して、マイクロビーズが入った商品は利用しないようにしたいものです。5種類の成分から選んでくださいね。
その他のマイクロビーズの利用範囲は? ハンドクリームやベビーパウダーにも利用されていました。 研磨剤としての特性がありますから、工業用研磨材サンドブラスト用研削材などに直接使用するために生産されるマイクロプラスチック、または様々な一般製品を生産するための前段階の原料(ペレットまたはナードルと呼ばれる)として間接的に使用するために生産されるマイクロプラスチックがあります。
|「マイクロファイバー」も大きな脅威
もう一つ問題になっているのが、衣類などに利用される「マイクロファイバー」です。
私たちが着る衣類の洗濯による布からの合成繊維の脱落です。洗濯機から洗い流された水に細かなマイクロファイバーが粒子となって海に流れ出すのです。
マイクロファイバーは、化学的に組成された8㎛以下の極細のナイロンやポリエステルなどの繊維で、木綿と同等以上の吸収性や通気性・保湿性を持たせた素材です。 ご存じのとおり、ユニクロをはじめいろいろなところで加工され売られています。
ユニクロヒートテックに使われている素材。 •34%ポリエステル •34%レーヨン •27%アクリル •5%ポリウレタン マイクロファイバーは細い毛の断面が鋭角や多角形の形状をしているため、細かいチリやほこりを繊維の表面に取り込みやすいという特徴があります。 この特性を生かして、めがね拭きや掃除道具にも使われています。 掃除用具では、よく目にしますね。 バスマットやトイレマット、テーブル拭きやハンディモップなどです。
マイクロファイバーの毛布も繊維が細いですから肌触りが良くて安心してしまいますが、繊維自体は角型繊維ですので摩擦は起こりやすいですので、肌の弱い方は注意が必要なんです。 また、マイクロファイバーの毛布を買った人の評判では、少数ではありますが、咳が止まらなくなったというものがあります。 これは、マイクロファイバーの細かいチリなどを取り込みやすいという特徴からきているものと思われます。 なので、アレルギーのあるかたは、お店で実物を確認してから購入するなど注意が必要です。
これらの商品を洗ったり、洗濯機を掛けるときに発生するマイクロファイバーからのちぎれ脱落。 これなんですね、回り回って私たちの環境を脅かしているのは。 激しい洗い方をすると、大量のマイクロプラスチックが放出されます。 洗い方にも注意が必要なんですね。
まあ、実際はそこまで考えて洗濯する人はいないのが実態です。 しかし、影響は微々たるものだと思われますが、こんなことがあるんだ、と知っておくことは必要でしょう。
~ まとめ ~
マイクロビーズといわれる極小の粒子が、今思わぬところで環境を汚染しているということが分かってきました。 それ自体は有効な特徴を持っていますが、どう利用するかがこれからの問題です。 他に代替が効くものでしたら、その素材に戻りましょう。
人体には、なるべく自然素材を使用した人にも地球にも優しい素材を使ってもらいましょう。 その特性によって、使いかたは異なります。
ヒートテックは温かいから冬山登山なんかには最適だろうと思いがちですが、レーヨンが1/3含まれていますので、乾燥の早いレーヨンは汗をかいた後汗冷えを起こします。保温を最重要と考える冬山には向かないのですね。
というように、薬用歯磨きも洗顔料も目的によって自分に合った使い方を心がけましょう。 かなり長くなりました。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
化粧品に多量のプラスチックアクリルビーズが使用されていますが、確かに毎日洗い落とされ、それが海中に蓄積され魚等にも影響を与えているのは問題。規制するような検討はされていないのでしょうか?また、人的有害物質を含む軽量微粒子バルーン等が空中飛散し人にも吸引される等、プラスチック微粒子は環境汚染に問題あると聞きましたが環境省は問題意識はあるのでしょうか?