先日、DIAMOND onlineに、秋山氏が書いたマネジメントに関する参考になる記事を見つけました。

あなたの提案が却下される理由は『上司の断り方』でわかる」というものなんです。

私自身も今まで数々の提案を行ってきました。 経験不足であった”若気のいたり”であったものや、将来を予見した”画期的な提案”だと自負したものが、木っ端微塵に打ち砕かれたりたりと、思い出せばきりがありません。

そもそも「提案」というものは、どの企業においても必ず存在します。 提案がない会社というのは、小さな改善から大きな改革が無いということですから、いずれ陳腐化するか時代の流れに乗れず淘汰されていく運命となるでしょう。

上司の「断り文句」から何を学ぶか!

とはいえ、企画や提案というのは、なかなか通りづらいものです。

上司との会議の席や、飲み会の席でもいいですが、仕事にまつわる言葉のやりとりで、「○○さん、それは面白そうだね」と口頭で共感をえることがあります。 また、経営者から「何か提案はないか?」と質問され、「○○をすれば、売上げを改善できるかもしれません」などと軽々しくのたまうと、「じゃあ、提案してください!」と切り返されます。

その場では、面白そうな企画や実現できそうな提案であっても、いざ正式に「提案書」としてまとめ報告したときはどうでしょう。

たぶん、多かれ少なかれ何かのダメ出しを食らうことは間違いなしです。

もし、丸のみする上司がいたら、その上司は自分の考えもなくノー天気な方でしょう。 一方、はなから全面否定する上司がいたとしたら、その上司は臆病な性格かとにかく自分が一番といういじわるタイプの方ではないでしょうか。

もし、ちゃんと説明してダメ出しを食らったなら、そこには提案の内容、もしくは提案者である自分自身の問題を抱えているかもしれません。

記事の内容に沿って、自分の経験談を交え、その「断り文句」を検証してみたいと思います。

そもそも提案する「資格がない」

① 百年早い

② お前は何様のつもりだ

③ 結果を出してから言え

④ 俺のやり方が気にくわないのか

これらの言葉は、若いときに浴びせられることが多いですね。 経験をかさね上のポストに付いていたとしても、例えば創業者からみれば、みんな「ひよっこ」です。 何を言おうと、自分の考えや好みに合っていなければ、この言葉が出てきてもおかしくありません。

若いときはこう反論してました。

「百年早い? じゃあいつになったら聞くの? 5年?10年? そのときは時代が変わって、こんな会社潰れてるぞ!」なんてね。 自分の浅い経験を棚に上げ、思い付きの素晴らしさに酔っての言葉でしたね。

でも、個人はまだ未熟でも提案には時代の可能性らしきものが息づいていて、あとから振り返ると「あの時GOサインが出てれば、もっと展開は変わってたな。 同業他社に後れをとるなんて考えられない。」と後悔も出る始末です。

若いころは、鼻っ柱も強いですから、「何様? そう俺様だ!」なんて心の中で叫んでました。 「聞く耳を持たないあなたが悪いんだ」とも。 どっちが聞く耳持たないのでしょうね。 どっちもどっちです。

しかし、「結果を出してから言え」、これは辛い言葉でした。 反論のしようがないですから。 「出しつつあります」と叫んでみても、実績が伴ってないということは、とても説得力に欠けます。 それを熱い想いでカバーできるほど会社は簡単ではありません。

「俺のやり方が気にくわないのか」という言葉は、そこで言わなくても提案を受けた経営者を含め上司全員が一度は声にだしていると思います。 提案は、現状を分析し、現状の仕組みの一部もしくは全部を否定して組み立てられているからです。 それまでの仕組みを肯定してきた上司や経営者は、変革は必要だと思っていながらも、やはり面白くないものです。

つまり、この言葉を潜り抜けようと思うなら、相手を知り、相手が賛同しやすいような言葉を使うなり雰囲気を作り出す努力が必要です。 若いときはこれが不得意なんですよね。

内容が提案として「成立していない」

⑤ ちゃんと検討できていない

⑥ それで、結局何がしたいの?

⑦ 具体的じゃないな

⑧ 俺を犯罪者にしたいのか?

⑨ 誰がやるの?

⑩ いくらで売るつもりなんだ? いくらお金をかけるつもりなんだ?

⑪ 仕組みが複雑すぎる

⑫ 日本にはいったい何人住んでると思ってるんだ?

この文句を投げかけられたら、自分の提案の甘いところが指摘されていると思わなければいけません。

項目は並べられても、「ここはどうなってる?」、「では、他社はどのような状況なのか?」、「そうならなかった場合、どうする?」など理詰めで来られることが多い。 そのようなとき、ある程度明確に応えきれないと「甘い」という印象になるんですね。

以前にも解説した「クイック&ダーティー」の考え方で、まずは速攻8割の出来たて案をぶつけて、本提案へ持っていくならこの質問は大いに歓迎すべきです。 本提案の場で、これが露呈すると、やはり「残念」という結果になります。

気を付けたいのが⑧の「犯罪者にしたいのか?」です。 これは、無知であるがゆえに起こることで、上司や経営者も見抜けないこともあります。 よくあるのが法的な制限を無視していないかということです。

例えば、セールやキャンペーンをかけようと景品やクジをする場合、景品表示法なるものに抵触してないか。 働き方を変えてシフトを組みやすくしようと勤務体制を変える場合、拘束時間や休憩時間の取り方が労働基準法に抵触していないかなど。

ただし、現在の改正消費税法のように、政府や業界が都合の良いように時限立法的な「特例」などがある場合、将来を見据えてどうするかは十分予見しておく必要があります。 これは犯罪者にはならないでしょうが。

特に「創業者」をはじめ経営者は、最後の責任を執る立場ですから、そこを冒険したがる人は少ないと思います。

「誰がやるの?」と聞かれると困るのは、人事権を持たない提案者が、「このプロジェクトには専任者として3人は必要です。」と息巻いても、決めるのはあちらですから「勝手なこと言うな」という具合になっちゃうんです。

しかし、経験上、新しい案件に対してすぐに専任者を決めて実行させる会社ほど伸びています

ダメな会社は、とりあえず兼任という形で担当させ、提案者へ負荷を背負わせるタイプです。 これでは、提案者がバカをみることになり、いずれは誰も手を挙げなくなります。

「やると決めた案件」に関しては、ちゃんと専任を置き(難しければ担当者の仕事の一部を他へ移す)、一定のスパンを決めて期ごと検証を行い、ダメなときは解散させる、そのくらいの覚悟が必要ではないでしょうか。

常に革新的で、建設的な企業は、必ずこの提案システムを持っています。

仮に慎重ではないと否定する経営者がいるとすれば、事業の拡大と時代への対応は望まないことです。 何故かというと、企業は、時代への変化対応と自律的な変革が行わなければ、事業の拡大は望めないからです。

「あの会社、また新しいことをやっている。 あんなSPAのチープな商品じゃ将来性はないね。 物流やインフラに設備投資を行ってるけど、何考えてるんだろ。」とバカにすると将来泣きをみるかもしれません。

提案と実行するシステムを持つ企業は、途中で「修正」することも想定しています。 当然、「改善」や「中止」することも十分想定しています。 だからこそ、フレキシブルにスピーディーな対応が取れるのです。

時は金なり Time is Money.」という格言がありますが、「お金」は価値ではありません。 価値を表すときに使う道具です。 ですから、企業にとって時間の価値はお金ではないような気がします。

時は生なり Time is Life.」 企業にとってもっとも大事なのは、人と同じく「時間」ではないでしょうか。 価値を生み出すためにもこの「時間」というものが大きく関係してきます。

企業も寿命を持っています。 ただし、人と違い、性格を変えることで寿命を伸ばすことができます

同じ業種の企業どうしであっても与えられた「時間」というものは皆同じです。 ということは、1年でモノにできる企業とそれが5年10年とかかる企業とでは、大きな差になって現れます。 変革を好む企業は、たとえ1年で不調でも修正して2年3年かかろうが、5年10年と何もやらない企業とでは、積み上がるモノが違ってくるのですね。

慎重な会社、安定志向の会社が良いと考えているあなた、ちょっと怖くなりません? 血液が淀むことがなければまだいいのですが、手足を動かしてないということは、運動不足に陥っていることですから、遠くまで走れないということです。

提案が会社や上司から見て「魅力的でない」

⑬ 頭のいい奴が考えそうなことだ

⑭ 大義がないな

⑮ サイズが小さいな

⑯ まともすぎる

⑰ 中途半端だな

⑱ 筋がよくない

⑲ なんであいつらの真似をしなきゃいけないんだ

⑳ 地域や領域の特殊性を考慮していない

㉑ かつて同じようなことをしてダメだった

㉒ 前例はあるのか

㉓ 換金できないだろう

㉔ 今がいいタイミングなのか?

㉕ 最初は良くても、その先が見えないな

創業経営者は、⑬や⑭のような言葉はよく出てきます。 自分自身が苦労した分、苦労を知らないくせに頭で考えたことを理路整然としゃべられることに虫唾が走るのだと思います。

これはしょうがないです。 そこまでの経験がない、今からしていこうとう段階なのですから、少しは大目に見てもらいたいものです。 いけないのは、理屈だけに頼ることです

⑮、⑯、⑰は、反省すべき点でしょう。 目先の利益に目が行ったり、逆に見た目は良くても将来に渡って利益拡大の根拠が乏しいなど、人材や資源を投入するには「ショボすぎる」ということです。 「ジョボい提案」は日々のQCの中で取り組みましょう。

自分が良かれと思っても、企業の収益は顧客から得られるものですから、その提案が顧客目線でユニークな提案であるかどうか、そこにつきます。

⑲の「他社や前例の真似」これを嫌がっていてはいけません。オリジナリティが無いこととアレンジすることの違いを説明できるか、また、再度やることの意義が説明できるか、そこにかかっています。

私の提案経験において、同業他社の状況や成功事例を求められることが大変多くあります。

特に慎重な経営者がいるならな、そこを外すと何の根拠もない提案ということで一蹴されてしまいます。 「そんな絵空事を持ってくるな!」ということになり、「調べてません」とでも言おうものなら、門前払いとなるのがおちです。

しかし、この他社の前例や成功事例は、生産性の近道としてもその本質まで迫ることが出来なければ、企業において「定着」させることは難しくなってきます。

ですから、事例そのものを真似するのではなく、その土台となった考え方や仕組みをマネすることが大事です。 そこを検証して提案できれば最高です。

もうひとつ、今までに難しいと思ったことは、㉕の「今がタイミングか?」ということと、㉖の「先が見えるか?」ということですね。

私自身、このタイミングという点で数々の提案をお蔵にしまってきました。

特にその時代において「早すぎる提案」というものは、まるで「夢物語」のように聞こえ、「実現不可能」のような印象を与えてしまうことが残念なところです。

「これからはこのような時代になりますので今から対処していきませんか!」と叫び、共感まで持っていくには、どれほどの努力と熱意が必要か。 それを覚悟しておかなければなりません。 それが無しに「早すぎる提案」をしてしまうのは、自分は爽快であっても、会社の決断というものを引き出すことは無理です。

ただし、これだけは言えます。 そうなると信じているなら、いつまでも「早すぎる提案」を改良し続け、温め続け、そのタイミングを待ち続けること、これさえ出来れば必ずその提案はいつか実現します。 要は「あきらめない」ことです。

このように時代の変化を捉えるような「大きな提案」、これに出会えた時の喜び、これも提案者冥利ではないでしょうか。

是非、臆せず提案をしていきましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。