PAC思考については、以前も触れましたが、今回は具体例で考えてみましょう。

これを使えば、上司や部下の矛盾した主張や提案を覆すことができるかもしれませんよ。

会社の担当役員から「以前もこの状況だったから、今回もそうなるはずだ。 だからしっかりやっといてくれ」だの、「今回の改善テーマはこれが前提だ。したがってプロジェクト方針はこの方向でやってくれ」

などと、いとも簡単に命令、指示されたことは有りませんか?

「え!ちょっと待てよ。何かおかしいんだけど。」と、PAC思考をすれはその矛盾に気付くことがあります。

今回紹介するPAC分析の手法を強く意識すると、あなたの問題分析力は向上するかもしれません。

 

簡単にPAC思考のおさらい

簡単にいうと、前提・事実Premise)、仮定Assumption)、結論Conclusion)の3要素で分析するのがポイントです。 とりわけ重要なのが仮定の立て方です。 その論理の正しさを確かめるため、仮定に反する事実を挙げてみます。 論理的に考えるには、主張の正しさをチェックする必要がありますね。

そこで重要なのが、「結論」の背景にある「前提」と「仮定」を疑ってみて、その妥当性を検証するのです。

相手の主張(結論)は、「前提・事実」および「仮定」の上に成り立っています。 そのどちらかを攻撃して崩れれば、主張は正しくないということになります。 「仮定」を攻撃して崩すのが一般的ですが、最近は、過去の常識が通用しない時代ですから、「前提・事実」自体の誤りを指摘することで相手の主張を覆せるケースも多くなってきました。

 

前回の例題

商品部の課長であるあなたは、事業部の部長Dさんに、営業合同会議で最近いつも責められています。

☑ D部長は、「あなたの開発したPB商品は全く売れていない。 もっと他社を研究して機能を増やした新商品を開発投入するべきだ」、と主張しています。

上のPAC思考を応用してあなたがD部長への反論を考えてみてください。

 

まず、「PBの新商品が売れていない。」というのが、前提であり事実(P)になります

次に、「新商品が売れていないのは、他社の研究が足りていないのと機能自体が不足しているからだ。」と仮定(A)がきます。

最後に、結論(C)は、「新商品の機能を増やし開発投入すべきだ」と堂々と言い放っています。

ちょっと待った!

そもそも仮定である、「研究が足りない」だの「商品の機能が不足している」ことが理由なのかい、と。

☑ 仮定(A)に対する反論では、「新商品が売れていない理由は、機能が足りないからとは限らないです。 陳列量が少ないとか、売り込むためのプロモーションが弱いなど、他にも理由は考えられます」となります。

ですから、上司の命令にある「新商品の機能を増やすべきだ」の主張は短絡的で検討の余地がある、ということになります。

☑ それでは、前提・事実(P)に対する反論では、「新商品が売れていない」という前提は本当かということです。 他の事業部では「売れている」という事実を示すことができれば、「機能の問題」ではなく、「売り方の問題」がその結論ではないかとの反論ができます。

 

それでは例題1

☑ 「N社は、売上利益拡大のため、関東地域へ出店することになった。今までと同じ戦略で出づくりをするべきだ

このような課題が出ました。果たしてこの戦略に矛盾は無いのでしょうか。検討してみます。

もっと詳しく課題を説明すると、

「我が社は、長年お客様に愛され西日本を中心になんとかここまでやって来れました。 既存店売上が伸び悩む中、今後の収益確保のために新しい地域へ出店します。 今までと同じようなお店づくりをすれば、必ずお客様に愛され成功するお店になるはずです。 ですから、新地域も大型店舗で同様の品揃え、同一サービスで出店戦略を組み立てるべきです。」

 

PACの整理

まずこれを、P(前提・事実)とA(仮定)、それにC(結論)に分けてみましょう。

P: ①西日本において長年お客様に愛されている事実

  ②既存店売上が伸び悩んでいる事実

  ③今後の収益確保のために新しい地域へ出店する前提

A: ④新地域でも今までと同じようなお店づくりをすれば、お客様に愛され成功する(仮定)

C: ⑤新地域へ大型店舗、同様の品揃え、同一サービスでの出店戦略をとっていく(結論)

攻撃1 まずAの仮定を攻めてみよう!

ここでの矛盾を突いた攻撃は簡単です。 ④が正しいなら同じ店作りで全国どこへ出しても、必ず愛され成功するのか、という疑問。 気候や地域差や、さらには趣味嗜好や土地柄というものが無視できるのだろうか、ということです。

それが説明できなければ、結論Cは「とにかく出店したい!」といいう願望だけの提案と言わざるを得ません。

☑ 仮定はそもそも、前提・事実と結論を結び付ける接着剤的役割です、いわゆる翻訳機のようなものでもあります。

☑ この仮定が変われば、同じPの事実からまったく反対のC結論が導き出されるかもしれません。

この例ですと、仮定④´=「新地域では今までとは違ったお店づくりのほうが、お客様に愛される可能性が高い」となるかもしれません。 そうなると、結論も変更され、新地域用に店舗やサービスを見直すことを考えるべきだ、ということになります。

 

攻撃2 次に元々の前提・事実を攻めてみよう!

元々の前提や事実に対して、それは本当だったのかここを否定してみる考え方です。

☑ 過去の経験や思い込みで、一部の前提が全体の事実として受け止められていたりします。 ですから、前提や事実の精査も重要な点なのです。

①´=「長年愛されていたというが、お客様が不便や不満と思っていたことがなかっただろうか
②´=「既存店売上が伸び悩んでいるのは事実かもしれないが、適切にスクラップ&ビルド(不採算店舗の閉鎖とリニューアル)してきただろうか
③´=「今後の収益確保のためにできることは、新地域への出店だけだろうか。 既存地域でなすべきことはないのだろうか

こうなると、話は全然違うものになってきますよね。

☑ 今までの営業活動をすべて肯定していたものが、新地域ではこれを真向から否定し、再構築しようとするわけですから。 土台となる前提・事実の認識が変われば、仮定も自ずと変わってきます

④´=「攻撃1と同様」。 または、「新地域をいきなり開拓するのではなく、既存地域のサービスを再構築し、出店は既存地域の近くから徐々に拡大していくほうが堅実であり、結果的にお客様に愛される可能性が高い」

という仮定に立つかもしれません。

そうなると、結論もそれら事実と仮定に引っ張られることになります。

⑤´=「新地域への出店戦略は、地域性や競争状態を考慮した店舗規模とし、地域の品揃え、地域独自のサービスを付加した出店戦略をとっていく(結論)」

という結論になるかもしれません。

☑ 過去の常識が通用しないことが増えた今の時代、P(前提・事実)自体の誤りを指摘することで、相手の主張を覆せるかもしれないのですね。

 

PAC思考は、課題解決に対して「疑う力」を養い、「信じる力」を形作り、有効な「結論」を導き出せる方法です。

この考え方自体はそんなに難しい手順があったり、複雑なものではありませんので、是非活用しましょう。

 

~ まとめ ~

☑ PAC思考は、主張や提案の妥当性をロジカルに分析するために使います。

通常、ロジカルな主張は、前提・事実Premise)から結論Conclusion)を導き出します。 そして両者を仮定Assumption)で結び付けていると考えるのがPAC思考です。

☑ 主張の妥当性を覆すには、A仮定を攻めてみることです。 A仮定が変われば、同じP事実からまったく反対のC結論が導き出されることになります。

☑ 過去の経験や思い込みによって論理上の誤りが隠れているかもしれません。 まずはこれを疑ってみましょう。

☑ 過去の常識が通用しないことが増えた今の時代、P(前提・事実)自体の誤りを指摘することで、相手の主張を覆せることもあります。

PAC思考は、課題解決に対して「疑う力」を養い、「信じる力」を形作り、有効な「結論」を導き出せる方法です。 ぜひこの思考を活用してみてはいかがでしょうか。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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