Forbesの投稿にこんな記事がありました。

売上高50兆円を越えるアメリカの巨大ディスカウントストア、ウォルマートが「アカデミー」を開設して顧客サービスの向上を目指すといいます。

これに対して疑問を感じるいうものです。

結論からいうと、「最安価格」と「素晴らしい顧客サービス」を両立できる企業などほとんど存在しないということです。

顧客サービス重視への疑問

それは、どうしてかというと、

お店のスタッフが顧客に提供できるのは、大きくわけると「①低価格、②高品質、③素晴らしいサービス」の3つです。 しかし、私たち顧客がウォルマートから手に入れられるのは、このうちの2つだけです。 同時に3つは選べないのですね。

ディスカウントストアへの買い物で求めるものを考えてみればよくわかります。 そもそも素晴らしいサービスを求めて行かないですよね。 ここで買うことがなにか「惨めに感じ」たり、スタッフの態度が「不快」でなければそれだけで十分です。 フレンドリーな声かけ以上求めるものはあるでしょうか。 売場まで細かく案内するだとか、商品説明をわかるまでしてくれるだとか、そんな接客はそもそも期待していません。

それでは、ウォルマートの顧客サービスアカデミーは何を目指すのでしょう。 「顧客満足度の高い店舗には知識の豊富な店員がおり、そうした店員らが売上高の増加に貢献している」と大学などの調査結果がありますし、専門店などはそのことを金科玉条のようにスローガンに挙げています。

「お客様満足度100%」、どの企業でも事務所の壁面に大きく貼られています。 まったく具体性のないこの言葉を使うことを一度止めてみませんか。

そもそも、顧客の満足度は、数値化できる絶対尺度ではないからです。 満足度は、あくまでも相対的に決められるものです。

顧客満足度は絶対値じゃない!

わかりやすい例を出しましょう。

価格に対する提供価値

まずは、「価格」です。 プレミアムモルツが欲しいとします。 すぐにでも飲みたい、仕事帰りにちょっと、というあなた、コンビニの冷えたビールに迷わず249円(込)払いますよね。 一方、買い置きしたいと思ったあなた、ディスカウントのお店にわざわざ買いにいくか、ネットで注文するか、近所の酒屋さんで買って帰るか、ここはほとんど価格勝負です。 奥さんと一緒に買い物へいくと、ここまで来たのだからついでにまとめ買いするよ、と言われるご主人、多いはずです。

コンビニには利便性と即効性への価値に対価を払います。 ディスカウント店には、低価格とまとめ買いできるところに価値があります。 専門店である酒屋さんは、豊富な種類が選べる選択性と、地域コミュニケーションの一部としての価値が求められます。特に銘柄など品揃えについては、大きな差別化になります。 ワイン専門店ですと、ソムリエの資格を持つような店主から接客を受けると、その価値が理解できて購入の意欲が湧くものです。

インテリア雑貨や家庭用品においてもまったく同じことがいえます。

事前の期待値との差がお店の満足度を決める

では、次に「期待値」についてです。

買い物をするお店に対して、事前にどのような期待を持っていたかということで、その満足度は変わってきます。

☑ 期待値を超える場合。 さきのウォルマートでは、過度な接客など期待していませんから、もし懇切丁寧に商品説明を受けるようなことがあれば、それは「驚き」です。何があったんだろう、とSNSするかもしれません。 アカデミーでそこまで期待しているとは思えませんが。

☑ 逆に、期待値を下回った場合。 自分に合った家具やカーテンを買いたいと思っていった専門店では、当然フレンドリーに対応してくれ、十分な説明と接客をしてくれるだろうと期待していきます。 それが、スタッフは見当たらず、忙しそうで待たされ、質問に対して満足に応えられなかった、となるとどうでしょう。 「二度とこんなお店で買うものか」と期待外れに憤慨してしまいますよね。

☑ 期待値どおりだった場合。 普段は、このケースがほとんどです。 サプライズもない、いたって変わり映えしなかった、いつもそこで買ってるから、という理由だけて来店されているケースです。 ここが一番危ないポジションです。 近くに面白い店ができた、キャンペーンを張った競合店に顧客が流れて行った、など、ある日突然、独占でもない限り、顧客の流出は始まります。

それでは、こっからが重要な視点です。

「口コミ」を起こすトリガーは何?

顧客、ここからはあえて「お客様」と呼びましょう。 お客様が自分の持っていた「期待値」を上回ったとき、他の人へ話したくなる、そうです、「口コミ」ということになるんですね。

この「口コミ」を起こさせるトリガー(起爆剤)は何なのでしょうか?

5つのトリガー

それは、5つあります。

それは、「驚き」 「疑問・興味」 「発見・納得」 「共感」 「感動」の5つです。

この5つがお客様のどんな「口コミ」の言葉で表現されるか見ていきましょう。

1.驚き

・おもしろい

「この前。金魚のティーバック見つけたんだけど、すごくおもしろいよ」

・すごい

「百均で、『固いもの切るはさみ」、新聞紙なら50枚くらいも切れちゃうすぐれもの』

2.疑問・興味

・自分はどう

「昔はやった右脳派左脳派。 占いとか、自分はどうなんだろう?」

・これって本当

「プロが愛用するDIY用品? 素人でも本当に使えるの?」

・本物かしら

「健康だけでなく、ガンの予防にも効果がある還元水、これ本物かしら

3.発見・納得

・便利

「バナナケースって知ってる? ダイエット中。お弁当に持って行くとき便利だよ」

・役に立つ

「カップ麺ホルダー知ってる? 役に立つよ」

・なるほど

「JAFが冬場、車のボンネットを叩けって。ネコが入ってるかもってよ!なるほど

4.共感

・わかる

「この商品は、自然環境に配慮しているし、エコにもなるんだ。わかったぞ。」

・すてき

「へえ、この柄を組み合わせればこんなに素敵になるんだ。」

・かわいい

「この前、雑誌で話題になっていたやつ。 かわいいわね!」

5.感動

・感動した

「1カ月で結果がでたよ。ありがとう、感動した!」

・泣けた

「これは泣けた。 みんな頑張ってるんだね。 私もこの本を読もう」

・考えさせられた

「今まで気づかなかった。この商品を使うことでみんなが幸せになるんだ」

これらは、お客様に衝動買いをしてもらうための観点ではありません。 企業が、顧客である「お客様」の心へいかにアプローチすればいいかの視点を提供するものです。

心の「琴線に触れる」、ささいな事でも、この心の琴線にふれたことは、ずっと心に残るものです。 そのお客様は、他の人から意見を求められたとき、そのことを必ず思い出してくれます。

顧客満足度のもう一つの観点

ただ、ここで勘違いしないようにしましょう。 それは、「顧客満足」で「大変満足」と答えたお客様が必ずしも「推奨する」と応えていないことです。 ある調査でも、「大変満足」と答えた人の約半数がをのサービスを「推奨しない」と答えているのです。

満足度が高いだけではリピーターにはならないということです。

もし、あなたが、リッツカールトンに宿泊することがあったとしましょう。 その素晴らしいサービスと設備に大変満足しますが、あなたのお友達へ推奨しますか、と問われると、少し考え込んでしまいます。

その理由は、「素晴らしいんだけど、いつも泊まれるわけじゃないし、1泊のお値段が高いから、友達にはねえ!」

「ここからは遠いし、いつも行ける場所ではないわ」など。

サービス自体には十分満足していても、商品の「価格」や店舗の「場所」それに駐車場の「不便さ」など不満があるようです。 この辺のことも解決できるか、または他社と比べてどうなのかと検討する余地がありますね。

口コミのサンプル

ここからは、口コミになりそうな過去のおもしろ動画を紹介します。

まずは6秒動画VINEで有名なザック・キングさんのコンテンツ。 よく考えられていてとにかく意外性もあり、面白いです。

1.驚き

・おもしろい

画面の十字の中心を見てください。有名俳優の顔が二人ずつ現れますが、まるでマンガのキャラクターに見えてしまいます。 おもしろいです。

当該サイトはこちらです。

・すごい

人間テトリスです。手間かかってますよ。よくやる!

・自分はどう?

ちょっと前に流行った、右脳・左脳人間どっち?です。

とにかく、試してみたくなるんですね。 そこが狙いでしょうが。

出典:http://braintest.sommer-sommer.com/ja/

下の動画は、サプライズがここまでお洒落だと言うことない、という作品ですね。

共感 ・すてき

感動 ・感動した

下の動画は、ネットで知り合った障害を持つ女の子同士が8年後に会って抱き合うという感動モノのドキュメントです。

・泣けた ・考えさせられた

https://youtu.be/5nRKyQ11494?t=176

~ まとめ ~

口コミを発生させる力は、「感情」と「ギャップ」の掛け算で決まります。 「ギャップ」とは、前で書いたように、事前の期待値と事後の評価のギャップです。 どちらか一方でもゼロになると、効果はありません。 企画を立てるなら、必ず両方を意識して練ることが重要です。

ただし、「ギャップの大きさ」は、企業や商品のブランド価値にそって考えるべきです。 仮に口コミで爆発的に話題になったとしても、最も大切なブランド価値を毀損してしまえば元も子もありません。 口コミが広がること自体を目的化してしまうと、とんでもないことになりかねないので注意が必要です。

口コミマーケティングは、誰にでもにいい顔をするような取り組みではなく、「顧客の心の琴線に触れ、わずかでもいい、感情を揺さぶるような取り組みです」。

そして、競争相手はライバル企業のコンテンツだけでなく、Web上やYouTubeにも存在します。 数億・数十億のコンテンツを相手に、共感を獲得するべく競争心を持って取り組む必要があります。 お金さえ払えば露出枠が保証されているTVCMや撒けば済むチラシ広告のような感覚で、安易にWeb上の壮絶な共感争奪戦に参戦するとやけどすることになるかもしれません。

LINE、TwitterやFacebookが当たり前となってきている現在、一般大衆の口コミパワーは人類史上、最大になっていると言えます。

会社にマーケティングという部署があるなら、ぜひ顧客の琴線に触れ、爆発的な口コミを発生させるマーケティング担当者としてチャレンジして欲しいものです。