ビジネスの世界では、経営者や組織の価値観を理解せずことに当たると、おおきなしっぺ返しを食らうかもしれないというお話です。

組織の中で何か新しい取り組みを提案したり、改革に近いことを提言したりすると、こういう返事が返ってくることがありませんか?

いとも簡単に「どうも違うな、堅実をモットーにする我が社の方針にはそぐわない」だとか、

逆に「もっと革新的な提案はないのか。どこにでもありそうなアイデアでは生き残れないぞ」

大きな態度で、「我が社は全国そして世界を目指す企業なんだから、もっと大きな視点で提案してほしい」

そうかと思えば、「自分たちにしかできない技術、人がやらなかった取り組みに挑戦していきたい」

 

このリアクションの違いは何なのでしょうか?

ロジカルシンキングで考えてみましょう!

 

組織の価値観がすべてを決める!

それは、経営トップや組織の価値観に沿っているかどうかで大きくその評価がわかれたのです。

価値観の違いを見ていく前に、組織を構成する経営資源を整理してみましょう。

組織の経営資源 7つ

組織のマネジメントを評価するときに、役立つ分け方が、コンサルファームで有名なマッキンゼーが普及させた「組織の7つのS」です。

7つのSですから、Sで始まる英語の頭文字をとっています。

 

☑ ハードのS 経営者が比較的短時間に変更可能でコントロールしやすいもの

1.組織 Structure 組織の在り方、階層や上下関係、それに事業部制か地域割りなのかなど。

2.社内システム System 管理や情報システムなどの仕組みや手続きがどうか。 人や業績の評価・分析、経営管理など。

3.戦略 Strategy 何を優先課題にしているか。どの分野に経営資源を配分しているかなどの戦略。

☑ ソフトのS 働く人によって決まり、コントロールしにくい簡単には変更できないもの

4.スキル Skill 社員や企業が持っている特有の能力。他社にないスキルを持っているかなど。

5.人材 Staff どのようなリーダーシップを求めているか。採用と人材育成の方法はどうか。人材はいるかなど。

6.社風 Style 組織で培われている文化や経営スタイル。

7.価値観 Shared Value 会社の拠りどころとなる経営理念や共有された価値観の浸透など。

 

ここで押さえておきたいのが、ソフトのSを成長させることはなかなか難しく、かなりの努力と時間を要します。 そこには経営者の価値観というものがさらに大きく覆いかぶさっているからです。

ですから、経営者自らが変わらない限り、その企業にそれまでとは違った変革は訪れないといっても過言ではありません。

 

「リアクションの違い」はどうして起きる

これを踏まえて、話を冒頭の話に戻りましょう。

提案時、どうして「リアクションの違い」が起きるのでしょうか。この「価値観」の相違によって起こったのですね。 新しい提案を求める経営者自身が、今までの価値観を踏襲していれば、その反応も自ずと画一的にならざるを得ません。

では、経営者や組織の価値観のタイプを分けてみます。

まず、決断のとき、意思決定の場面を想像してください。

経営の意思決定では、「やる」か「やらない」かです。 その「やる」か「やならい」かは何処からもたらされたものなのか。

どう行動するか、「アクティブ派」か「パッシブ派」の2タイプ

「この環境化では、積極的に自分たちから行動を起こさなければならない」という「行動的(アクティブ)」な思考から来たもの

「この状況では、世の中の変化についていくしかない。他社から取り残されないように対応したい」という「受動的(パッシブ)」

行動からみたこの2つのタイプがあります。

能動的な経営者や企業は、常に自分たちが業界の中心にいて、世界を回しているのは我々だという自負があります。 時代の流れに対応するのですが、その時代の流れを自分たちで積極的に作り出していこうというタイプでもあります。

一方、受動的な経営者や企業は、世の中は自分たちの思い通りにはなり難く、コントロールはままならないと思っています。 ですから、よく勉強をする代わり世の中の変化に対して敏感になり、他社から遅れまいとします。

何を重視するか、「結果重視派」か「プロセス重視派」の2タイプ

「せべてのステークホルダーに対して結果責任がある」、「その提案によって、どんな結果が期待できるんだ」と、企業は結果責任を追及してはじめて社会から認められるという、特に株式公開している企業のほとんどは「結果重視」でしょう。

「自分たち企業の使命は何か、社会に誇れる商品サービスとは何かを追及する」、「仕事はあくまでもやりがいであり、楽しいと思う気持ち、また技術の深まりやその完成度に全力を注ぐ」という下町ロケット的な「こだわり」や「プロセス」を重視する企業です。

何を重視して意思決定をするかは、この2タイプです。

世の中に多い結果重視の経営者や企業は、ときにはギャップも生み出します。 経営者の求める結果と従業員が感じる現実的な結果との差異です。 これを埋めるには、組織のソフト、つまり人材の確保と教育が重要となりますし、それを活かす経営者の存在も不可欠になります。

プロセス重視の経営は、独りよがりの経営に陥る可能性があります。 自社の製品に対する思い入れが深すぎて、時代の流れに乗れず顧客のニーズにそぐわない製品を作ったり、成果の出にくい事業に資源を投資したりすることも大いに考えられます。

上のタイプを合わせた4タイプの経営者

☑ アクティブ思考で結果重視の経営

業界のトップ企業に多く、その道で知られた上場企業の多くがこのタイプの組織でしょう。 特徴として、改革や改善という言葉に感度は高く、その意識もとても高いものをもっています。 しかし、現在の収益源を考慮すると、なかなか冒険へと突き進むことが難しく、アメリカで見られるようなイノベーションに長けた企業が生まれにくいのも日本企業の特徴です。

過去の成功事例を多く抱えるこれら企業は、それを踏襲していけば間違いないと、経営者自身もその傾向が顕著となり、同じパターンから抜け出れないという残念さも併せ持っています。

さらに、ビジネスの王道を極めたと思っていますので、ちまちましたことを嫌がる傾向もあり、大きな収益ばかり追いたがったりします。 とくに若い人材が新しい提案をする場合、無難な提案が優先され、挑戦的な提案のチャンスを削がれることがあります。 ここは、組織論でいけばハードのSがしっかりしていれば、取り上げられる可能性は高くなりますが。

☑ アクティブ思考でプロセス重視の経営

敢えて言うと、文化祭的企業です。 「その提案おもしろい!」「その提案には夢がある!」などと、その先進性やワクワク感に対して反応するタイプの経営です。 行動的ですから、社内からどんどん提案を受け入れ、「いける」と思える案件は、「社内ベンチャー」として立ち上げるぐらいの組織です。 人材さえいれば、そこには挑戦とやりがいがあります。

とにかく、「やってみなければ何も始まらない」という、覚悟の経営というとかっこいいですが、結果として独りよがりだったということもあります。

☑ パッシブ思考で結果重視の経営

結果を求めてはいるが、受け身の経営。 実はこのタイプの企業も多く存在すると思います。 このタイプの経営スタンスは、企業を存続させることが第一で、保身とは言わないまでも、堅実で保守的です。

保守的な考えで生き残ろうとすれば、自分の業界での立ち位置が気になります。 業界では、トップを追いかける立場というより、4番手5番手に位置し、他社から「出遅れる」ことを大変気にします。 そこには企業の独自性であるとか、俗にいう差別化された商品やサービスがなく、自身の優位性を前向きに追い求めて行かない傾向があります。 同業者を定点観測し、経営者も含め社内あげてその対策に取り組むのですが、反対に顧客を定点観測し、社内あげて愚直にニーズを掘り起こし、商品開発とそのアッピールに奔走するという姿勢は乏しい、という企業も多く見かけます。

それなのに結果を重視しますから始末は悪いです。 思い切った提案や施策が取り入れられる可能性が低い中での結果ですから、押して知るべし、大きな結果は望めません。 これを堅実経営というなら堅実経営です。

ただし、その企業の未来が明るいかというと、どうでしょうか。 堅実という名分の中で、従業員がぬるま湯の中につかり、自らの手で改善改革していこうという気概が損ねられてしまいそうです。 挑戦的な機会も少ないということになれば、社内だけではなく、社外からの提案についても「受け入れる余地なし」ということになり、協力者が少なくなり、いるとしてもレベルの低い協力者だけが残ってしまう危険があります。

特に残念な組織なのは、トップがカリスマタイプの場合です。 その代までは、何とか堅実に企業の存続が図れるかもしれませんが、そこに残された経営陣や従業員に、人材が果たして残っているか、という問題です。 いくら勉強する企業であっても、それを積極的に活かしてこなかった環境で育った人材は冒険ができません。 あとはじり貧を待つのみです。

☑ パッシブ思考でプロセス重視の経営

このタイプは、まさに「下町ロケット」の「佃製作所」みたいな企業です。 言い換えると、「職人肌」の企業ですね。 他社にない素晴らしい技術を持ち、自分たちのこだわりや夢に向かって邁進する。 「この製品が作れないだろうか」と頼まれれば、どんなに困難であろうともその挑戦意欲は高く、全社を巻き込んでそれにあたる。

利益よりも、自己実現と社会貢献に重きを置き、自分たちが信じる方向へ向かったひた向きに努力していれば、必ず報われると考えている経営ですね。 頼まれた難問を、自分たちの手で解決できた、というその喜びの方が強いんです。 愛すべき企業と思いませんか。 きっと、社内は、夢溢れ、ドラマチックだろうと思います。

しかし反面、価値観をともにできない従業員がいると、きっと彼は辛いでしょう。 ここで暮らす従業員は、スキルはこれからでもせめて経営者と価値観を同じくして働くことができなければ、ついて行くことは難しいでしょう。

企業が持つ価値観を見極める

上で4つの経営スタイルを見てきましたが、自分がこれから関わる企業がどんなタイプなのかはとても重要です。

すでにその会社の従業員となってしまっている人は、自分との相性をもう一度検証するしかないでしょうが、そこから転職しようという人は、その相性を十分検討することができます。

まずは、自分自身はどのようなタイプなのかを知る必要があります。

もう一度おさらいしますと。

自分自身のタイプは、

A君 行動的で成果主義が性に合っているタイプ

B君 どちらかというと行動的だが、結果オンリーでなくその仮定を重視する評価してほしいタイプ

C君 どちらかというと受け身だが、やるからには結果を意識していきたいタイプ

D君 受け身だが、好きなことや楽しいことにはとことん努力していきたいタイプ

さて、あなたはどのタイプですか?

自分のタイプを確認したあなた。 今度は、企業へアプローチする提案者になってみて考えてください。

社内を説得する殺し文句 (例)

1.アクティブ思考で結果重視の経営者へ

☑ 「この提案は、新し顧客ニーズを掘り起こし、その潜在規模は大きく、グローバルな観点からみても十分勝算はあると考えます。」

☑ 「この戦略は、御社の方針である社会への貢献だけにとどまらず、この業界の発展においても多大な効果を発揮すると考えます。」

2.アクティブ思考でプロセス重視の経営者へ

☑ 「この提案は、御社だけのために考えてきたものです。 どこにもないものだと確信しております。 御社のノウハウがあれば、実現可能だと信じております。」

☑ 「この戦略は、リスクを伴います。 しかし、そのリスクは決して越えられないものではなく、成功でのリターンはその何十倍の価値で返ってくるはずです。」

3.パッシブ思考で結果重視の経営者へ

☑ 「この提案は、どこへ出しても恥ずかしくないものです。 他社の成功事例を踏まえて綿密に計画されています。」

☑ 「この戦略は、我が社が業界での生き残りをかけた最後の挑戦です。 他社がシェアを伸ばしている現状を考えると、ここで決断しなければ、将来後悔することになると考えます。」

4.パッシブ思考でプロセス重視の経営者へ

☑ 「この提案は、他社にはできないしろものです。 我が社の技術だけがその実現を可能とし、世界的な特許への一歩となると考えます。」

☑ 「この戦略は、この業界を見渡しても御社だけが取り組める画期的な案件だと考えます。 日本におけるパイオニアとして、その技術を知らしめるためにも是非ご採用ください。」

このように、相手に対して責めるポイントを外さなければ、お互いにWinWinの関係になれるはずです。

 

~ まとめ ~

1.組織には「7つのS」があります。

 ハードのS 経営者が比較的短時間に変更可能でコントロールしやすいもの

  1. 組織 ②社内システム戦 ③戦略

 ソフトのS 働く人によって決まり、コントロールしにくい簡単には変更できないもの

④スキル ⑤人材 ⑥社風 ⑦価値観

 

2.組織や経営者のタイプは4つにわけられます。

① アクティブ(行動的)思考で結果重視

② アクティブ(行動的)思考でプロセス重視

③ パッシブ(受動的)思考で結果重視

④ パッシブ(受動的)思考でプロセス重視

 

その企業の文化、つまり企業が持つ価値観を知り、自分がどのタイプの人間かを知ることで、付き合い方は大きく変わってきます。

私にも経験がありますが、「言うは易し行うは難し」で、相手の琴線に触れる「殺し文句」が言えるかどうか、実際の現場では難しいことです。

しかし、その場では、歯が浮いたような言葉に感じられても、その企業の本質を外してなければ、後で決断するときには、大いにその言葉を思い出してくれるはずです。

特に、決定権を持つ経営トップがどのような価値観を持ちどのような行動タイプであるか、そしてどのような組織を抱えているかを含めて、見極めることは、ビジネスの世界ではとても重要ですね。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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