ビジネスにおいて2つの数値からその傾向を見て経営判断する、これはあたり前でしょう。

しかし比べる数値によっては、グラフを描いても直観的に訴えてこないものがあります。 クライアントに結局何がいいたいの?と首をかしげさせることにもなります。

このグラフ選択のセンスはとても大事です。

グラフそのものの出来もありますが、そこから読み取れるのは、作成した説明者が数値の意味を理解し、何を伝えたいかを明確に表しているかなのです。

センスが光るグラフにする

今回は、そんなひと工夫したグラフを考えてみましょう。

一般的な数値表や分布図(散布図)では説明しづらいこともバブル図を使うと直観的なイメージで理解しやすくなります。

バブルチャートと言われるグラフは、3つのデータを3次元ではなく2次元で表現するすぐれた方法の一つといえます。

例えばこんなグラフです。

引用:http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2009/04/22/5411

バブルの大きさは、3つ目の数値としてサイトの月間訪問者数です。 ここで比べているサイト数が7つくらいですからまだその関係性は見えますが、サイトの数が多くなるとバブルが重なり合って見づらくなります。

では、2つの数値比較のままでバブルでうまく表現する方法はというと、これが「パックバブル図(packed bubble chart)」です。

その前に、一般的な分布図の使い方を見てみましょう。

一般的な分布図の使い方

例えば、営業店の売上と利益がどのような状況かを調べてみたいとします。

まずは各支店ごと把握し数値表を作ると思います。

数値表だけじゃ分かりにくいよね、ということで分布図(Excelでは散布図)を描いてみようと考えるでしょう。

例えばこんなグラフ。

営業店の実績分布がこれでわかりますが、グラフの中に傾向線を引いて売上と利益の関係を見てみます。

傾向線から売上が伸びれば利益も上がるという正の相関関係が現れました。

傾向線近辺の営業店はひとまず置いといて、外れ値であるA店やC店、それに問題店と思われるB店が目立ちます。 次に、ここを重点的に原因を探るというステップへ移っていくでしょう。

これが一般的な分布図の使い方ですね。

それではここで日本の人口問題から一つのグラフを考えてみます。

この分布図で何が言いたいの?

これからは少子高齢化の時代に入り、生まれてくる子供の数が減り、団塊の世代を含め高齢者が増えていきます。 頭でっかちの人口ピラミッドは、年を経るにしたがってどんどん上にあがっていきます。 人はいつかは死にますから死亡数が出生数を大きく上回るようになるんですね。

現在の人口ピラミッドを見てください。 約1億2800万人と言われる日本の人口。 しかし、国立社会保障・人口問題研究所では、人口が2030年には1億1522万人、さらに2060年には8674万人になるとの予測が立てられています。

それでは、次の分布図を見てください。

平成26年度における日本47都道府県の出生数と死亡数の関係を比べてみました。 単位は千人です。

全国の出生数は1,003,474人、死亡数は1,271,671人です。 出生数が死亡数を上回った県は、沖縄県、愛知県、滋賀県のわずか3県でした。

死亡数が大きく上回る県は、秋田県の2.52倍を筆頭に高知県の1.99倍、青森、山形、岩手、徳島、和歌山、山口、島根、新潟県の1.72倍と続いていきます。

各県でそもそもの人口が違いますから、各県の出生数や死亡数の数値そのものを比較しても意味がありません。

したがって、各県の出生数と死亡数の関係は、限りなく完全相関に近いのではないかと思いましたが、Rの2乗は0.965386でした。 少しブレがあります。

パックバブル図で直観的に理解

先の図では、出生数や死亡数の関係が分かりにくいので、分析ツールTableauを使って次のようなパックバブル図を作ってみました。

少子化問題を抱える日本では生まれてくる赤ちゃんの数が問題ですから、円のサイズ(大きさ)を各都道府県の出生数としました。 これによりどの都道府県でどのくらい多くの赤ちゃんが生まれてきているかがわかります。

次に、死亡数との関係(出生数と死亡数の差数)を色のグラデーションで表してみます。 濃い赤ほど出生数が上回っており、濃い黒ほど県内の死亡数が上回っていることを表します。

これを見てわかることは、東京都や神奈川県など首都圏においてしばらく人口の減少は緩やかでしょう。 一方、大阪府や兵庫県など関西圏においては、首都圏より早く人口減少が進みそうです。 深刻なのが北海道です。

ここでは、あくまでも出生数と死亡数の2つの数値だけから推測していますが、各都道府県の人口減少を語るには移動人口の状況も探る必要があるでしょう。 つまり、転勤や移住による移動です。

移動人口を加味して考えるとさらにおもしろい

2014年における日本人の都道府県間移動者数は225万9688人となり,3年連続の減少となっています。

東京圏の転入超過数は1万2884人の増加。名古屋圏及び大阪圏は2年連続の転出超過となっています。

東京圏は10万9408人の転入超過。前年に比べ1万2884人の増加。19年連続の転入超過です。 10年で全国の出生数と同じ100万人ですから、首都圏集中はうなづけます。

ちなみに名古屋圏は803人の転出超過で2年連続の転出超過です。 しかし愛知県は4年連続の転入超過となっています。 出生数も増えていますから、ますます周辺地域から都市部への移転が多くなっているのでしょう。

反対に大阪圏は1万1722人の転出超過で2年連続の転出超過となっています。 大阪圏は出生数だけではなく人口流出も起きているということです。

また、沖縄県は出生数が大きく上回っていますが、2008年以来6年ぶりの転出超過となっています。 人口の増加はいったんおさまりつつあるでしょうが、子供を産む若い世代が元気というのはとてもいいことですね。

~ まとめ ~

2つの数値比較のままでバブルでうまく表現する方法が、「パックバブル図(packed bubble chart)」です。 直観的な表現で説明するにはとっても有効なチャートだと思います。 是非、ご活用してみてはいかがでしょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。