上司の言葉ひとつで、こうも職場の受け取り方が違う、よくある話と思いませんか。

「なんかうちの部長の指示は、愚痴っぽいのよね。」だとか、

「いや~、うちの課長は、みんなで一緒に頑張ろうって雰囲気だしてたわよ。」だとか、

社内で同じことを皆に語り掛けていうのに、どうしてやる気度合いが人によって変わってくるの?

 

|本当に伝えたいことを伝えるには

以前の職場であった、「職場通達」の例です。

2つのお店の文章を比べてみてください。 その差は歴然です。

それは、CS調査といって、知らないうちにお店を評価されることがあるのですが、こっぴどく社内で怒られた店長が、従業員向けに書いた店内文です。

 

まず、CS調査について簡単に説明しますね。

小売業のお店では、CS調査なるものが覆面にてよく行われています。

CSとは、カスタマー・サティスファクションの略で、日本語では「顧客満足度」のことです。

お店のお客様に対するフレンドリーさや接客応対、レジでの対応、そしてお店のクリンネスや雰囲気までを覆面調査するんです。

各項目を点数化して各お店を評価し、人材教育の改善点をあぶりだしていきます。

毎月行っている企業もありますが、私の経験では年2回行っていました。 覆面調査人は、内部で抱えるということも可能ですが、すぐにバレてしまいますので、、やはり訓練された外部のサービスを使うことがいいでしょう。

人はどうしても好き・嫌いという絶対評価が優先されやすいですから、評価はなるべく同じ基準で測る相対的なものにする必要があります。

 

CS調査の具体的なやり方はこのへんにして、

以前、こんな例がありました。

 

愚痴ぽくなったA店長の社内文章

評価が悪かったお店において、A店とB店、それぞれ店長が出した店内指示の文章で、これほど従業員の受け取り方が違うんです。

 

A店 ××店長

従業員の皆さんへ

当店の接客について、覆面調査が行われた際に、最低評価がつけられました。

私も残念ですが、部長は方針がわかっていないと激怒されています。

当店は、以前から売上が低迷しておりますし、部長からは目をつけられていました。

それがこの最低評価ですから、今後さらに厳しい指導となることは間違いありません。

いつも言っていますように、アルバイトさん含め正社員の一人ひとりがプロ意識を持ち、質の高い接客をしてください

徹底できないとなるとお店の存続にも関わります

よろしくお願いします。

 

伝えたいことが伝わるB店

B店 〇〇店長

従業員の皆さまへ

残念ながら先日、当店の接客に関し、厳しい声が寄せられました。

「商品を尋ねても、知らない上に探すのに時間がかかる」

「レジで従業員同士が私語をかわし、客の方を見ていない」

「すれ違っても、挨拶をしない店員がいる」というご指摘です。

今後、この3点のようなことがないよう、ご協力をお願いします。

商品がわからない、接客で困っているということがありましたら、

わたくし店長や担当社員に気軽に尋ねてください。

皆さまと協力し、今後はさらに良いお店にしていきたいと思いますので、

よろしくお願いします。

 

伝わる文章とは?

さて、A店とB店の店長が従業員全員へ伝えたい文章、いかがだったでしょう?

 

A店の店長は、愚痴になってしまっています。

具体的にどう行動してほしいのか、アルバイトさんはわかりませんよね。

「プロ意識を持って質の高い接客をしろ」といわれても、どこが悪かったのか、

どういう方法をとれば良いと思われるのかがまったくわかりません。

 

ましてや、上司の部長がどうのこうのというのは、情けなくも関係ありません。

店長のイライラをぶつけるだけで、言いたいことはわかりますが、

これでは伝わらないし、皆の感情を逆なでする結果にもつながります。

 

文章としては、店長が主体性を持って、どう具体的に全員が協力して行動していくかを示すべきです。

その点、B店では「どこを直してほしいか。どこを具体的に取り組むか」を示しています。

 

「人を動かす文章」を書くためには、ゴール(目的)を絶えず明確に意識しておく必要があります。

文章で伝えるということは、その文章で「だれかに何かをしてもらう」ために書かれていることがほとんどです。

 

今回の覆面調査を受けての店内宣言文では、「反省と改善と行動」を盛り込むべきなんですね。

怒りに任せてなんとなく書いた文章では、とても残念な結果しか生みません。

 

読む人の気持ちに沿った文章であれば、辛い内容であってもそこに共感が生まれ、改善したいという意思が働きます。 また、具体的な行動を示す内容であれば、どこを反省し改善していけばいいかをしっかりと把握できます。

 

これは、今回の反省文や、お客様への謝罪文だけでなく、お客様に買ってもらうための広告文なども同じです。 行動を促すことが目的ですから。 「本当に伝えたいことを伝える」この法則を守りましょう。

 

~ まとめ ~

☑ 人の心を動かす文章を書きたいと思えば、絶えずゴールをはっきりと意識する。

☑ どの文章も基本的には、「だれかに何かをしてもらう」ために書くということを理解する。

☑ 多くのことを詰め込みすぎず、「本当に伝えたいことを伝える」よう整理する。

簡単にいうと以上の3点が「相手に伝える簡潔な文章」の注意点です。

 

A店の例のように、感情を表に出し、熱く語るとしても、愚痴と捉えられないようにするためには、自分の反省を吐露し、それに自分の意見を加えましょう。 他人を引き合いにだすことだけは避けましょう。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。