平均値にダマされるな!必ず中央値とセットで使おう!
サラリーマンの2015年度における平均年収が集計されていました。
会社という組織に属し、新入社員から定年を迎えるまで、
企業という枠の中で窮屈なりとも、なんとか楽しみを見出し、
とにかく頑張ってみる。
日本の平均的サラリーマン像です。
|平均値のマジック
ところで、この平均的という言葉、
さらにはその裏付けとなる「平均値(mean)」という数字、
これにはどうも気を付けた方がよさそうです。
というのも、「平均値が同じだから一緒だね」とすぐに安心してしまう。
ビジネスにおいて、そんな輩がやたら多いのですね。
まずは、2015年版「業種別の平均年収ランキング」を見てみましょう。
業種別の平均年収では、医療系のメーカーが700万円近くで1位、
500万前後には9位サービス系や10位IT系のSI事業者がランキングされています。
|平均年収だけでは良し悪しは比較できない
なんだこんなにも年収が違うのかと、早とちりしないでください。
まずここには、平均年齢がありません。
日本にはまだまだ年功序列型の賃金体系が残っていますので、
平均年齢が何歳での年収なのかは、
生活レベルを比較する上では必要になってきます。
もう一つ大事なことは、
どのような構成でこの平均数値が導き出されてきたか、ということです。
|生データはこんなにもバラツキがある
企業の年収を比較した次の簡単な例を見てください。
上の表は、社員10人の年収をサンプル比較した表です。
平均年収でいえば、「××興業」と「○○商事」は同じ600万円です。
一応賃金コストは同じです。
しかし、年収順に並べた表をよ~く見ると、
どうも上と下の差が激しいことに気が付きます。
下の比較した棒グラフを見てください。よりわかりやすいと思います。
××興業は、一人飛び抜けて年収の高い人がいます。
たぶん創業者の息子か、かなりのエグゼクティブな仕事をしている人でしょうが、
それはさておき、このJさんのために平均年収が高くなっています。
|中央値でも見るクセをつけよう
そこで、中央値(median)というものをとってみましょう。
この中央値とは、
「すべてのデータを大きい順、
ないしは小さい順に並べたとき、
真ん中にくる値」 を指します。
データの個数が、今回のような偶数の場合は、真ん中にくる2つの値の平均をとります。
さて、〇〇商事の中央値580万円と比べてみましょう。
どうです?
××興業の中央値が480万円ですから、その差はなんと100万円。
実際中心的に働いている社員たちからすると、ギャップは大きいですね。
××興業の社員は、平均年収600万円をどう考えても納得できないでしょう。
このように、偏ったデータから平均値を算出すると、
実態とかなり違った姿が浮かび上がってしまいます。
したがって、データの傾向を捉えてみたいときは、
平均値だけでなく、中央値もセットにして見ることにしましょう。
|中央値を表示した総務省統計局のグラフ(例)
統計局のHPに掲載されている貯蓄に関するグラフです。
貯蓄現在高階級別世帯分布(二人以上の世帯:平成25年)
ここには、平均値と中央値がしっかりと明記されています。
グラフから何が読み取れるかというと、
貯蓄高の平均値は1739万円で、
世帯全体を二分する中央値は1023万円となっています。
世帯分布をみると、平均値を下回る世帯が68.0%を占め、
世帯分布は貯蓄高の低い階級に偏っています。
ということは、庶民感覚の貯蓄高は、
中央値である1000万円くらいではなかろうか、
という結論になるんですね。
一部の高貯蓄高層が平均をかなり押し上げているということでもあります。
~ まとめ ~
ロジカルシンキングに平均化は不可欠です。
平均化して考えるということは、一般化して考えるということです。
さまざまな個別の事情を数値で取り上げ、
全体像を見極めていくという、
平均化はとても大事な作業です。
しかし、平均像を出してみたはいいが、
実は実態とかけ離れていましたでは、
なんのための議論であり、なんのための検討だったのか、
とても残念なことです。
平均値と中央値はセットで扱いましょう。
「平均のマジック」に惑わされることなく、
「統計のウソ」を見破るような実態に近づく努力をしましょう。
これが、見破る側ではなく、仕掛ける側だとしたら、
自分にとって都合のよい数字を作り出すことができます。
現代ビジネスにおいて、データ分析やグラフの利用は必須です。
その裏に隠れたデータの本質を冷静につかめる、
そんなビジネスマンになりたいものです。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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