けっこう会社とは理不尽なものです。

とくに数字の伸び悩みなど方策に行き詰ってくると、
経営者からどう考えても相反する方針が同時に出てくるんですね。

どんなビジネスでもよくありそうなことですが、
モノを売る商売が基本の小売業でよくみかけます。

相反する方針が同時に出てきたら

例えば、

「売上を上げろ! コストも削減するんだ!」

「新しい取り組みにチャレンジしろ! 今までの基本を大切にしろ!」

「どこにもないプロモーションを実現しろ! コンプライアンスを遵守しろ!」

「ネット販売や物流再編に着手しろ! リスクになるものを排除しコストを削減しろ!」

などなど。

言ってることがどうも真逆ではありませんか、とツッコミたくなる内容です。

トップのひとこと
あなたはその金科玉条をおしいだくか!

経営層には様々な課題が圧し掛かってきますから致し方ないとは思うのですが、それを受ける側とすれば、大いに混乱します。 特にカリスマ経営者が発する言葉となるとなおさらです。 全員、その言葉を金科玉条(きんかぎょくじょう)のごとく押し抱くんですね。

「トップがおっしゃることだから、すぐにでもみんなを集めて会議を!」

「すぐにでも実績を作って、随時報告しなくては、とにかくやろう!」

ほとんど全員がこう反応していまいます。

これってダメな会社?と聞かれると、そうとは言い切れません。

じゃあ、何がマズイの?と聞かれると、すべて同時に片付けようとすることです。

イベント(施策)には大中小と「関わる影響範囲の大きさ」がまずあります。

売上を上げろといっても、一部の商品なのか、不振店の売上なのか、今月の全店売上を言っているのか、はたまた今期の売上を指しているのかで大きく違います。

次に、達成するためには同じく大中小と「成果を見極める必要時間」があります。

新しい取り組みをやれといっても、いつまでに完成すればいいのか、その規模によって実現時期が違うからどう期間を判断すればいいのか、どれくらいの実現時期を狙っているのかで大きく違います。

経営トップからこのような真逆な方針が同時に出た場合、どうすればいいのでしょう?

受ける執行部隊は、「時間軸」をしっかりと確認することです。

ここが整理されているとトップの逆噴射は無謀でもなければ思いつきでもなくなります。

その方針をどうやって同時進行させるかが見えてくるでしょう。

具体例から考えてみましょう。

修理すべきか否か
エアコンの修理。

今年の方針で、
接客を強化しお客様に快適なお買い物をしていただこう」、
徹底的なコスト削減に取り組もう! 最低でもコスト維持
が同時に出されたとしましょう。

ここで「エアコンの温度調整が不調」と多額の修理費用が掛かりそうです。

結論から先にいうと、「すぐにでも修理する!」が正解です。

その時、どう考えるか。

コスト削減の方針は、固定費そのものを下げたり生産性改善によって下げたりすることが先につながります。 しかし、エアコン修理などの一時費用をかけないことは、不快時間を増大させそれによる損失の方がより膨大です。 また、お客様に快適なお買い物をしていただくためにも大切なアメニティーです。

だったらすぐにでも修理をして、評判を失うリスクを無くした方がいいですよね。

新規費用はどこまでかける?
ネット広告などIT投資

今年の方針で、
ネット販売に取り組み成果を出せ!」、
広告宣伝費は現状の規模で考えろ!増やすな
が同時に出されたとしましょう。

ここで、「ネット販売を拡散させるための広告費」が新たに発生してしまいます。

結論から先にいうと、「新たに費用を掛けたくないならネット販売やるな!」です。

ネット販売は、既存企業の知名度があれば、ホームページを作成しただけでバンバン売れていく。 そう思っているのはネットをよく知らない素人経営者です。 ネット上の露出度を高めるためには、大勢が検索するページのトップに躍り出る必要があります。 向こう側にいる消費者は、あらゆるキーワードで検索をかけてきます。 その中で選ばれるためには、それ相当の努力が必要なんですね。

無名の成功しているネットショップがネット集客のために何をやっているか。 訪れた客にネット上のコンテンツでどう信頼を持ってもらうか。 利用者レビューに正直に取り組み、双方向のコミュニケーションにトライしているか。 そもそも商品以外で顧客のためになることが豊富に提供されているか。 など、守備範囲はとても広く、成功者はどれもおろそかにしていません。

リアルな店舗を出すように、ネット上にもネットショップを出し、商品を並べれば売れる、という時代はとっくに過ぎています。

もし仮にそれでも並べるだけで売れるとしたら、圧倒的なブランド力があるか、圧倒的に安いか、その企業だけが取り扱っている商品か、という理由ぐらいです。

つまり本気でネット販売を展開していこうという方針であれば、どの分野から育てていくか、どのくらいの目標で育てていくかによって、ネット広告費を含め投資する金額は変わります。 ここをしっかりと押さえ、提言しなくてはなりません。

まして広告宣伝費を増やすなという方針は、この単年度の目標です。 中長期的にも維持を目論むのであれば、広告費の仕向け先を見直す必要があります。 TVCM、新聞チラシ、雑誌、店頭チラシ、POP、ネット広告、コンテンツ制作と配分の再編と整理です。 今までの成功体験による費用配分に固執するより、時代は変わっていくのですから今後を見据えた費用配分へトライしましょう。

ただし、ここは小売業にとって大事なマーケティングになりますからトップマネジメントで大方針を決めるべきです。

特に今や、企業の情報は、ネットや口コミで得られる顧客情報と対等の立場にあるといえます。 企業によっては評判を知らない顧客以下のところもありますが、そう考えると大変な時代です。 顧客側の方が購入のための豊富な情報を持っていますから、その情報を知りえない企業側はいずれ淘汰されていく運命にあります。

今では、ネットのサービスとして顧客と企業を結ぶアンケートサイトやモニタリングサイトが登場してきています。 自社で構築するには多大な費用を時間がかかります。 商品に対する顧客のいち早い変化をつかむために生まれた、採取コスト削減や採取時間短縮するサービスです。

今と将来の課題を区別する!
人材の確保

今年の方針で、
新事業の立ち上げで即戦力になる人材を募集しろ!」、
この先の10年後を支える優秀な人材を確保してほしい!
が同時に出されたとしましょう。

ここで、「募集のための全社総動員」が新たに発生してしまいます。

結論から先にいうと、「即戦力の募集と10年後の人材確保は別次元の問題!」です。

新事業の立ち上げに数十人必要であれば、かなりの募集人員が必要になります。 きちっと面接し、役員面接までもっていくならそれ相応の準備と期間が必要でしょう。 ましてや10年後に通用する人材を募集するのであればかなり厳選されます。 それを同時に方針として出したらどういうことになるか。

似たような例が私の友人の会社で起こっていますのでご紹介します。

その会社は、新しいプロジェクトのために20人を採用しなければなりません。 人事担当の役員が、新卒リクルートからの経験をもとに計画を立てました。

3か月の期間に20名の有望な人材募集ですから、募集も面接もタイトです。 しかし、将来の有望株を募集しますので面接は慎重をきします。 そこで、人事担当は現場の優秀な係長・課長職を1次面接担当者として募集人員に割り当てました。 人材紹介会社とネット募集で対応し、最終的には100人程度をふるいにかけたいという算段です。 1次面接担当者を現場から10人選定し、ひとり10人リクルートさせます。

募集は順調にみえたのですが、部長面接を途中で挟み1か月後の役員面接までこぎつけたのが8人です。 役員面接は3回予定していましたので、2回目には10人以上は集まるのではないかとたかをくくっていましたが、結果3名。 これでは20名の目標に届きませんし、役員面接で2人落としていますので現在のところ採用者9名です。

あせった人事担当が調べたところ、実にこの2か月で募集者の総数は60名もいたことがわかりました。 課長までのリクルーターが4人のうち3人を面接で落としていたのです。

理由は「将来に希望が持てる優秀な人材ということで、終業後も自分の時間を割いて各募集者との接触を繰り返し、慎重に選んだ結果が4人のうち1人の選考です。問題あったでしょうか?」 彼らは優秀であるがゆえに会社のためにとフル回転してくれたわけです。 そんな彼らを責めるわけにもゆかず、残り1か月、人事担当役員はさらなるお願いを出したわけです。

「あと11名を採用しなければならない。君たちには申し訳ないが1人につきあと5人程度はリクルートしてくれないか!」

これには、面接担当者のみならず現場の部長からもブーイングが出る始末です。「これ以上負担を強いられると業務にも支障がでる。 人事でなんとかしてくれないか。」と。

結果的には、この募集騒動が組織を混乱させ、各部の協力体制にヒビが入り、付け焼刃の人材を入れるか不足の人員で新規事業を立ち上げるか議論になったそうです。

騒動の原点はどこにある?

この話、騒動の原点はどこにあると思いますか?

前2つの例とよく似ています。

「即戦力を求めるという喫緊の課題」と
「将来、中心となる人材の育成」という
目的の大きく違った方針を同時に叶えさせようとしたことです。

~ まとめ ~

企業ですから、様々な課題に答えを求めていかなければなりません。

ここでわかるように、気をつけておかなければならないことは、

目的の違いを明確にすること」と
実現までの時間軸をはっきりさせること」です。

今の立ち位置がはっきりしない経営トップが、このような方針を同時に出したことを一番の元凶とすべきかもしれません。

しかし、同時にそれを受け止めるスタッフがいるのですから勇気を持って提言していきましょう。

矛盾はどこにでもあります。

組織が上から下まで幸せに仕事ができるのは、「この矛盾を正し、わかりやすく咀嚼(そしゃく)して現場へ伝えていくこと」これも中堅マネジメントの役割ではないでしょうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。