値引き販売による減益のジレンマ、ユニクロや吉野家の決算
モノを売るために、企業はどれほど悪戦苦闘するものか。
お客を呼び込み、商品を替え、価格をいじったり、はたまた広告やキャンペーンを仕掛ける。
時代に合っているか、これからの気候は暑いの寒いの?と予測と想定を繰り返します。
|変化に対応できるか!
真剣に考えれば、けっこう大変ですよ。
だって、色々な要因で収益の数字は変化しますから。
「うちの店は、そんな小難しいことは関係ないですよ。昔から何も変わらないですからね。」
とノー天気なご主人でも、ようく見ると周りの環境は大いに変わっていることが見つかるものです。
若い人はどんどん減って、年寄が増え、人の流れも変わっちゃった。
そんな周囲の環境変化からあなたのお店だけ関係ないということはありませんよね。
でもこんな反論があるかもしれません。
「ネットで売れば地域に縛られないから、一定のお客は見込めるでしょ。 暑さ寒さに関係ない商品を扱っているから、それも心配ない。 流行っているモノも扱って無いから、ほんと大丈夫なんですよ。」
確かに。 このようなニッチ商品であれば一定以上は稼げそうです。
でも、ちょっと待ってください。
「それを扱っているネットのお店はあなたのお店だけですか? それを欲しがっている顧客はずっと変わらないのですか、それとも増え続けているのですか?」
ほら、これだけでもあなたのお店がいつまでも安泰というわけにはいきません。
つまり、商品はどんな環境であっても必ずいくらかの影響を受けることになるということです。
ということは、企業というものは顧客へ向かって常に新しい提案をしていくべきなんです。
そうでなければ、簡単にあなたのお店はダメになっていくかもしれません。
|ユニクロと吉野家は減益、その理由
ということで、2月決算を発表したユニクロと吉野家の数字を見てみますね。
減益の理由の一つに「11月・12月の暖冬の影響」を挙げています。
それにもう一つは、ユニクロが「1月・2月に値引き販売を強化」したことを挙げ、さらに「物流費や人件費などの経費増」を挙げています。
吉野家は、目玉である「牛すき鍋膳の販売減少」を挙げ、減益の大きな原因に使用をこだわっている「米国牛肉の仕入価格上昇」を挙げています。
また、吉野家は店頭では今年から50円値引き券を配ってるんですね。 それに、Tポイントも始めました。
|ユニクロ、売上回復策、値引き販売のジレンマ
ユニクロは、値引き販売によって今年に入り客数が回復しましたので一応OKですが、経費増になったというのはとても残念です。 そんなこと分かりきったことですから。
というのも、「客単価」を見ればわかります。 「客単価」は、「1品の販売単価」×「買上げ点数」で構成されています。 これが1月、2月もそれまでの傾向と変わらず既存店前年比106、103と客単価増を容認しています。
この値引き販売を増やしたわけですから、「1品の販売単価」は大きく減ることになります。(高単価の商品が抱き合わせで売れれば別ですが。) 当たり前ですよね。
そこでなんとか「客単価」を落とさなくするためには、「買上げ点数」を大いに上げるしかありません。 一人のお客さんにより多く買ってもらおうという施策です。 事実、販売点数(売数)は、客数増を見てもわかる通り2割程度増えたのではないでしょうか。
ということは、最初から物流費や人件費は増えることが想定されていなければなりません。
一気に商品が動き接客時間が増え必ず経費は増える、だから減益になるとわかっていても緊急避難的に「やらざるを得ない」という状況が、今のユニクロにはあるのですね。
拡大志向の企業にとっては、「売上」がすべてを癒すことになるからです。
半面、「客単価」を上げ続ける政策で乗り切ることは、けっしていいことばかりではありません。
顧客から見て「高い商品ばっかり!」ということになります。
これが「この価値でこの値段はすごい」というような高付加価値の商品が供給されての上昇でしたら、思惑通りなのですが、「ブランド力」を自信に単に単価増を狙っているなら、必ず顧客からしっぺ返しをくらいます。
しかし、辛いですよね。 ユニクロはこれからの「ブランド力」を高めたいと、きっと思っていると思います。 でも苦しいときの値引き販売じゃ、どうでしょう。
SPA(製造販売業)ですから在庫を繰り越すことは死に値しますので、なんとか処分しなければならないのですね。 なんともそこにジレンマを感じます。
もともと、ユニクロのマーケティング戦略は、「高機能なベーシックアイテムをシンプルデザインでよりファッショブルな基礎アイテムをこんなにも低価格で販売する」というもの。
表現は悪いですが、わかりやすくいうと、
「こんなにも技術を駆使した最先端の素材を使ってるんだから本当は高いんだぞ。」と
TVなどでイメージ戦略を流し、
「店頭ではこんなにも安く販売しているんだぞ。」という、
顧客からみたら
「なんとありがたい会社なんだ。」
「なんとありがたい商品なんだ」
と思わせる落差を使った戦略です。
けっしてこれが悪いというのではありません。 同一ブランドの中で低価格戦略を採ると混乱は生じますが、ユニクロはちゃんと「GU」事業を別に立ち上げていますので。 一応、ユニクロ本体と比べGUは好調みたいですね。
小売業にとって「客数」というものは、顧客にどのくらい支持されているかを示すバロメータです。
この客数が伸び続けることが理想ですが、既存店になるとそれは厳しくなってきます。 地域でのシェアには一定の上限があるからです。
しかし、「元気な既存のお店」というものは、「客数一定」を補うだけの隠れた施策が必ず存在します。
それは、気候の変化があってもそれを補うための別のキャンペーンを仕掛けていたり、顧客が関心を持つような新商品を常に導入して顧客を飽きさせない努力を重ねていたりと、常に環境の凸凹を補う何かを提供し続けています。
そこには、商品や価格だけではなく、店舗のアメニティであったり、顧客サービスであったり、そもそもの基礎であるフレンドリーやクリンネスを徹底させているだの、できることは山ほどあります。
『ぶれない経営』ということは大事なのでしょうが、企業目線からのぶれない姿勢というのはそろそろ止めて、本当に顧客目線からのぶれない姿勢を打ち出してもいいのではないでしょうか。
吉野家については次の記事で触れますね。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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