長年の時を超えても、商売の本質は変わらない。

それは、お客様あっての商売だからです。

モノが売れていくのは、そこに買いたい人がいるからです。

 

では、売れるモノを置けば、売れていくのではないか。

理屈はそうであっても、簡単に売れていくものではありません。

 

商売の基本「お客様の声を聴け」

小売業で働くと、必ず「お客様の声を聴け」と教わります。

 

売場では、お客様から様々なことを質問されます。

「この商品どこにありますか?」、「広告の商品ありますか?」、「これと同じ物はありますか?」、「サイズ違いはありませんか?」、「この前TVで見た商品だけどありますか?」、など商品の存在そのものを探す質問。

「これ値段はいくら?」、「チラシに入ってる値段?」、「もう少し安いのある?」、「値引きはしないの?」、「あの店より少し高いわね」、「ネットでも同じ値段?」、など商品の価格についての質問。

「これとどう違うの?」、「値段の違いはなんなの?」、「どの位もつかな?」、「材質は何を使ってるの?」、「子供が使っても安全かな?」、「壊れやすくない?」など商品の品質についての質問。

「これどんなときに使うの?」、「水に濡れても大丈夫?」、「速さはどのくらい?」、「これにも使えるかな?」、「何かの代わりになるかな?」など商品の機能についての質問。

 

このように、何がどこにあって、いくらで、どんな質で、どんなことに使えるか、商品そのものについての質問です。

ときには苦情(問題)も寄せられます。

 

「床が汚れていて滑りやすわよ」、「トイレがつまっているわ」、「この商品ホコリがかぶってるわよ」、「違う商品が混じってたじゃない」などクリンリネス(清潔、整理整頓)の問題

「レジの対応悪かったわよ」、「おつりを間違えてるわ」、「あの従業員、接客態度が悪い」、「質問にろくに応えてもらえなかったわ」、「電話の応対がなってない」、など接客についての問題

「すぐに揃えられるって嘘じゃない」、「欲しいものが揃っていない」、「いつ来ても欠品っていわれる」、「すぐに取り寄せできないんだって」、など品揃えについての問題

「賞味期限が切れてるじゃない」、「犬のエサだからってこんなに古いの」、「製造年月日が古いわよ」、「家に帰ったらすぐに枯れちゃったわ」、など鮮度についての問題

 

①クリンリネス(整理整頓、清潔)②フレンドリー(接客)③品揃え④鮮度管理「商売の基本4原則」といわれています。

これらの質問(お尋ね)や問題(苦情)を解決していくことは、お客様が快適にお買い物され満足していただくためには大変重要なことです。 これが信頼を勝ち取り、売り上げを大きく左右する源だからです。

 

ですから「答えは現場に落ちている」ともいわれているんです。

 

そこにいる従業員が売場に立てばその状況に必ず遭遇することになります。 一人ひとりがその課題を真摯に解決できれば必ず良い会社になること間違いなしですが、現実はなかなかそう行きません。 現実はとても厳しいのですね。

 

現場に落ちているが誰も拾わない現実

一人ひとりが遭遇しても、その場で終わっていることが多いんです。 会社としてその情報を確実に拾っているかというと、問題が起こったとき以外は誰も関心がありません。 普段から情報を集めるなんてことはなかなかやらないんですね。

それが今のほとんどの小売業ではないでしょうか。

 

どうしてこんなことを言うのかというと、

現代のデジタル化は、簡単にその問題へアプローチすることを可能にしていますから、その気になればいくらでも集められるんです。

現場で日常起こっている顧客との出来事をストレスなく溜め込んで共有することができます。 その溜め込んだデータを分析し、日々の商売へ還元させていくということができます。

ITを利用しなくても、人間系でそれら情報を集めることはできますが、多大な手間と情報を整理し配信する担当者が必要です。 だから何よりも長続きしないんですね。

声を聴いて、メモに書き留め、それを集め、選別して集計し、意味のあるものにまとめ上げていく、そのまとめ上げたものをお店へ配信し、活かしてもらう活動をする。 これを繰り返すわけですから。 この意義をしっかり理解していなければ、担当者はモチベーションを保てないでしょう。

 

|お店の外はすべてデジタル化!

よ~く、今の私たちの時代を観察してみてください。 コミュニケーションについては、ここ10年で凄まじいほど様変わりしています。

街を歩くとほぼ9割はスマホを持っています。 それ以前の情報コミュニケーションと言えば、ネットからの一方通行がほとんどでした。 それがスマホを持つことによって、SNSの普及と併せ双方向になってしまいました。

スマホを持つ人は、何かあるとスマホで検索し、オモシロければFacebookに投稿したり、Twitterへ即座につぶやいたりと、口コミがリアルタイムで拡散していきます。 仲間とはLINEで会話し、画像はインスタグラムで、動画はYoutubeと、手段は様々、これを使いこなしてるんです。 俺は検索だけ、という人も、家でパソコンを開く時間は少なくなったのではないでしょうか。 そのくらいスマホの威力は生活様式を一変させました。

ということは、

お客様が当たり前のようにデジタルで情報を得ているのに、
その気になれば何でもできる企業が、
かたくなにデジタル化をいやがっている、
いやいやまったくの無関心、

これが今の小売業です。

 

「おいおい、ここでいうデジタル化ってなんだよ?」 とツッコミが入りそうです。

簡単にいうと、
お客様がデジタルを使いこなし、より現場に近いところで商品やお店を選んでいるんだったら、相手となる小売業もデジタルの利便性を活用してお客様と向き合ってみませんか?、
ということです。

「デジタル化?うちはやってるよ!」という企業があるかもしれません。

でもそれって、ホームページを単純に作ってるだけ、ネットで販売してるだけではありませんか? ここでいうデジタル化はコミュニケーションのことを指しています。

 

じゃあ、どうすればいいのか、となるんですが、明確な答えはありません。 オムニチャネルというキーワードもここ最近ですし、企業のSNS活用もここ最近のことです。 緒についたばかりですから、さっそく考えていきましょう、ということなんです。

 

別にIT投資をもっとしろ!と言うのではありません。

顧客がデジタル化に対応しているのに、企業側が対応していないというのは可笑しいでしょ。

ITはあくまでも道具ですから、顧客側の進化にどう対応しようか、と考えるだけでも価値があると思いませんか?

 

「お客様の声を聴けていない」現実があるにも関わらず、ただただ「声を聴きましょう」と建前を振りかざしていても意味はありません。 本気でどうしたらいいかを考えるときですし、デジタルを使えばうまく機能する可能性のある時代になっています。

 

遠い将来といえず、すぐそこまできた未来とでもいいましょうか、AIやIoTはさらに時代を変革するかもしれません。

AIやIoTは仕事のしかたを変える

AIは、人工知能といわれるものです。 人間の脳が行っている知的な作業をコンピュータで模倣したソフトウェアやシステム。 具体的には、人間の使う自然言語を理解したり、論理的な推論を行ったり、経験から学習したりするコンピュータプログラムなどのことをいいます。

SFのロボットのように、知性を持った機械ですね。 これからどんどん実用化される車の自動運転もAIですし、介護ロボットや案内ロボットなどもAIです。

IoTは、様々な「物」がインターネットに接続され、情報交換することにより相互に制御する仕組みです。

 

このIoTの登場により、AIと組み合わされると、世界を産業革命に匹敵するくらいのインパクトを与えるかもしれません。

融合したモノどうしは、会話し、AIを使ってお互い学習し、その成果を動作や推奨で返していくようになります。

ということは、経験を積んでいけば、普段の状況にはほとんど対処できることになってきます。

 

例えば、あなたが今日は早く帰れそうとLINEすると、それを受け取ったIoTたち(物にセットされた)が自分たちのルーティーンを検索し、計画として確認します。 主は、今日の好みを入れるだけで、炊飯のセットからビデオの録画までをこなし、冷房のONから温度管理、風呂を沸かし、就寝計画まで行ってくれるかもしれません。

小売りの現場であれば、什器のあらゆるところにセンサーがあり、顧客の行動を逐一とらえ、来店から購入までの一連の動作を分析するようになるでしょう。 個人情報は秘匿するとしても、この顧客は、ネットで何を検索し、わが店には何を求め、どう回遊して商品を探し、実際購入したかがわかります。 買った理由、買わなかった理由をAIは分析してくれるとしたら。 どうします?

得意客が来店すると、自分のスマホへ連絡が入り、あらかじめ把握された顧客のニーズとあらかじめ用意された提案を持って、呼ばれることなくすぐさま迎えることができるとしたら。 どうです?

顧客を知ることは、小売りにとって、商品を変え、売場を変えていくことが次のアクションにつながります。 そうやって顧客の関心を得、購買までいかに結びつけていくかが重要です。 デジタル化がいち早い行動を起こすための示唆を絶えず送ってくれるわけです。

顧客にとっては、店舗のAI化とIoT化によって、ストレスのない便利な店舗となっていくでしょう。 あらかじめ欲しい商品はネットで検索をしておきます。 店舗へ入るとスマホはその場所を案内してくれます。 決済はスマホですし、事前に決済登録していますので難しいことは何もなし。 購入するモノを持って店を出るだけです。 あなたは、スマホで支払いを確認するだけです。 レジもありません、レシートもありません、すべてネット上に記録が記載されていきます。

店内にいる従業員は、本当の意味での専門相談員とトラブル対応の管理者しか必要なくなるというのですから、なんとも様変わりと思いませんか。

すぐにこんな時代がくると言ってるわけではありません。 確実に時代は変わりつつあります。 ただ、今までの延長線上で仕事をしていていいのでしょうか?という問題提起です。

人が店舗にくる理由は、季節感を体験し、新しい現物を探すことの楽しみと、お買い物のリアル感、そしてプロの販売員とのコミュニケーションからモノを買いたいという欲求です。 ネット社会がこれからどう変化しようと、リアルの中で買い物を楽しむという行為は無くならないでしょう。

 

近江商人の家訓に次の言葉があります。

☑ 三方よし。「売り手よし、買い手よし、世間よし」。

☑ 無理に売るな,客の好むものも売るな,客のためになるものを売れ

 

これからの時代、マンパワーだけでなくデジタルも駆使しながら、顧客との接点を深めていく努力をしなければなりません。

これこそが、新しいマーケティングではないでしょうか。 従来のマーケティングとは距離をおいたものです。 この続きは次回に。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます!